鼈甲細工
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/26 04:40 UTC 版)
鼈甲を加工して作る鼈甲細工の歴史はかなり古く、中国で生み出された技術で6世紀末頃から製作されている。日本には飛鳥時代頃に伝来し正倉院にも収められている。17世紀以降、長崎に貿易で唐船やオランダ船から鼈甲の材料と加工技術が伝来したことで国内生産が始まり、「長崎べっ甲」が生まれた。大阪から江戸にも伝わり、今日では三大産地として「長崎べっ甲」「なにわべっ甲」「江戸べっ甲」がある。 江戸時代には眼鏡のフレーム(徳川家康の眼鏡が有名)、櫛、かんざし、帯留め、ブローチ、ボタンなどに加工されて普及した。現代ではこうした装飾品の多くはプラスチック素材に変わったが、昔ながらの「鼈甲柄」を模すことも多い。鼈甲自体の手入れに関しては汗や整髪料には弱いので、眼鏡のフレームなどは空拭きで磨く必要がある。なお、鼈甲は人の体温によって微妙に変形する性質があることから、眼鏡の鼻当ての部分に使用すると掛けた人の形にフィットする。そして繊維の方向性があり汗に濡れてもすべりにくい効果もある。鼈甲製の眼鏡が重宝される所以である。鼈甲のかんざしが良いとされているのも繊維の方向性のため、髪に挿した時、簡単にはずり落ちてこないからである。鼈甲は男性器や女性器を模した性具(所謂「張形」)の材料としても利用された(鼈甲製張形の画像)。鼈甲は非常に高価な素材だったが、寛保(1741年)のころ水牛角などによる精巧で廉価な模造品が登場し、「似たりのカンザシ」などと呼ばれた。 明治時代又は大正時代の鼈甲の簪(かんざし) インドの櫛 鼈甲の未加工品と製品 鼈甲製品 江戸時代か大正時代の簪(かんざし) - (ホノルル美術館所蔵) 江戸か大正時代の簪(かんざし) - (ホノルル美術館所蔵) 鼈甲の簪(江戸又は大正時代) - (ホノルル美術館所蔵) 鼈甲が使われた櫛(江戸又は大正時代) - (ホノルル美術館所蔵) 鼈甲が使われた櫛(江戸又は大正時代) - (ホノルル美術館所蔵) 17世紀 - 18世紀の鼈甲製の箱(フィンランド国立博物館)
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