鳥獣保護区指定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/22 08:21 UTC 版)
奥野ダムと松川湖周辺は現在、静岡県指定奥野ダム鳥獣保護区に指定されている。だが、この鳥獣保護区指定はダム完成後の事であり、ダム建設によって鳥類が繁殖したというケースである。 ダム建設は環境に大幅な改変を加えることから、ダムと環境との関わりについて論争されることはしばしばである。特に1998年(平成10年)に環境影響評価法が施行された後は、猛禽類の繁殖が確認されたことでダム建設がストップする例も多く、開発と環境保護の整合性が問題になっている。奥野ダム建設に際してもこのような懸念があったことから鳥類への影響についての調査が行われることとなり、ダム本体着工前の1981年(昭和56年)12月よりダム完成後の1992年(平成4年)3月までの11年間、伊豆野鳥愛好会によって生息調査が継続的に実施された。 ダム建設当時はオシドリとカルガモのほかには目立った鳥類の生息は確認されていなかった。だがダム工事を経て完成して以降次第に鳥類の数が増加して行った。カモ類ではトモエガモが新たに増え、このほかアカハジロやツバメ、アマツバメなどが新たに確認された。さらに、ダム建設前には確認されていなかった猛禽類も確認されるようになり、ミサゴやワシタカが確認された他、サシバが南方へ渡る際の飛行コースになっていることも調査で判明した。 最終的に調査したところ、建設前の鳥類生息数は5目17科であったが完成後は倍以上となる13目29科87種の鳥類の生息や飛行が確認された。これは人造湖の生成という新たな環境の出現により水辺が生まれ、餌となる魚類の捕食がしやすくなったことや湛水による水位の上昇で、狭い谷だったのが相対的に広くなったことで飛来しやすくなったことが考えられている。こうした結果によりダム周辺は鳥獣保護区に指定されたわけだが、とかく「環境破壊の権化」として環境保護団体やエコロジストなどから忌み嫌われているダムが、鳥類の環境形成に寄与しているという一面を見ることができる。
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