首都圏進出
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 00:23 UTC 版)
中部エリアには、トヨタグループ各社の主力工場が多数ある。このため、中部電力の大口電力収入の約3割をトヨタグループが占めるといわれ、トヨタグループは中部電力にとって重要な顧客である。電力自由化の開始後、関西電力がトヨタグループ対して密かに営業攻勢をかけたと報道されたことがあり、中部電力はこれに大きな衝撃を受けた。 2009年(平成21年)頃、中部電力の三田敏雄社長(当時)は、同社が東京電力と関西電力とから挟み撃ちにされることを危惧し、そうなる前に電源開発(Jパワー)と提携して首都圏に進出することを水面下で模索した。Jパワーは乗り気であったというが、この案は、2011年(平成23年)に東日本大震災(福島第一原子力発電所事故と電力危機)が発生したことなどが原因で、立ち消えた。 東京電力は、福島の事故後、原子力発電を停止し、火力発電で代替するようになった。燃料費がかさんだため、2012年(平成24年)1月、高圧・特別高圧の電気料金を平均約17%値上げすることを予告した。中部電力には、この発表を知った首都圏の需要家から相談が寄せられるようになった。この年は、関西電力も全ての原子炉を停止したため、中部電力は、関西電力に電気を融通する必要があり、供給力に余裕がないという理由で、首都圏の需要家からの話を断っていた。 2013年(平成25年)5月頃、中部電力は、同社が資金を負担して東京電力常陸那珂火力発電所構内に建設する火力発電設備から電気を引き取り、首都圏で独自に販売したいと、東京電力に申し入れた。同年10月、中部電力は、50 Hzエリアで電気を販売するために必要なノウハウやインフラを手に入れるため、三菱商事からダイヤモンドパワーを買収した。翌年6月、中部電力の100%子会社であるシーエナジーが首都圏で電気の小売を開始することを発表した。 2014年(平成26年)10月、東京電力の廣瀬直己社長と中部電力の水野明久社長とが共同で記者会見を開き、燃料・火力発電事業に関する包括的アライアンスの協議に入ることを発表した。このアライアンスは実現し、2015年(平成27年)4月、両社は共同してJERAを設立した。 当時、水野明久社長らは、「東電が首都圏の安定供給の役割を果たせないなら、中部電がその役割を担うしかない」と覚悟を決めていたという。もっとも、中部電力は、関西電力に攻め込まれるシナリオを想定しており、「ジリ貧の将来を考えれば、首都圏と海外の火力で稼ぐしか」ない、首都圏進出は「東電が弱体化している今しかできない」というのが本音であったともいう。 2017年(平成29年)4月には、首都圏での販売拡大のため、中部電力販売カンパニーに東京営業部を設置した。2018年(平成30年)には、大阪ガスと共同でCDエナジーダイレクトを設立し、同社が首都圏で電気・都市ガスの販売を開始した。首都圏における電気の販売は、2020年(令和2年)7月までに、一部を除き、CDエナジーダイレクトに集約した。
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