預金者保護法成立に至る経緯
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/31 21:52 UTC 版)
「過誤払い」の記事における「預金者保護法成立に至る経緯」の解説
1988年(昭和63年)に、エレクトロバンキング専門委員会が設けられ、この中でキャッシュカードに係る過誤払いの危険を考慮し、海外の事例を参考に預金者保護を規定する立法をするべきとの意見が出た。 これに対し、金融機関側は、既に確立していた判例を見ても銀行に過失のない支払には民法第478条に基づく免責を認めるのが私法の大原則であり、また、預金者保護の制度をみだりに作ることは被害の偽装を助長し混乱を招く恐れがあると主張した。そして、不正出金への対応は立法によらず、あくまでも約款による対応を強く望む金融機関側からの強硬な反対意見を受けて立法化は見送られた。 2003年(平成15年)ころから、スキミングで作出された偽造カードによる預金詐取の問題がクローズアップされ、併せて盗難カードや盗難通帳に基づく過誤払いに対して金融機関の被害防止が後手に回り、また被害者への対応がこれまで不十分であったと指摘され、改めて預金者を保護する立法を求める動きが出た。 これに対し、金融機関側は、約款による返金が可能であり、重ねての補償の規定は冗長で不合理であり不要であると主張した。また、当時既に不正出金による被害を補償する約款を備えた銀行があることも踏まえ(例えば新生銀行では、ATMの前で脅迫され、出金を強要された上でそれを喝取された場合でも補償する、としていた)、補償の条件も含めて約款は個々の銀行がそれぞれに定め、預金者はこの中から適するものを選ぶ自由があり、一律に補償を規定する立法は自由契約の原則にそぐわないとして強く反対し、業界の自主規制による対応を望んだ。 しかし、金融機関側の反対を抑えて、2006年(平成18年)に預金者保護法が施行された。ただし、この法律では、金融機関に開かれた個人名義の口座のキャッシュカードをATMに挿入して金銭詐取が行われた場合にのみ補償が命じられ、それ以外の過誤払いの場面では依然約款並びに民法第478条による銀行の免責の可否が検討されることとなる。
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