非典型溶血性尿毒症症候群
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/05/03 06:56 UTC 版)
「エクリズマブ」の記事における「非典型溶血性尿毒症症候群」の解説
エクリズマブはaHUS(英語版)の治療に有効である。“非典型”とは日本では「血栓性微小血管症(TMA)から志賀毒素によるHUSおよびADAMTS13活性著減によるTTPを除いたもの」と定義されており、TMAをきたす多彩な疾患概念であるが、エクリズマブはこれらの内、補体制御異常を原因とするもののみに有効である。aHUSの患者は日本では100名程度とされる。米国では2009年4月に希少疾病用医薬品に指定されており、登録患者17名と20名という極く小規模な前向き臨床試験の結果で承認された。 スタディ1では、エクリズマブは17名の患者全員で補体関連TMAを26週間抑制した。26週間の間で、血小板数は大きく持続的に増加した。13名(76%)で血液検査値(血小板数+LDH値)が正常化し、15名(88%)でTMAイベントが消失した。クレアチニンクリアランス(eGFR)は9名(53%)で一時改善し、改善期間の中央値は251日間であった。加えて、試験開始時に血液透析が必要であった患者5名中4名で血液透析の継続が不要となった。QOLは大きく改善し、8割の患者が26週後に臨床的に意味のある変化を迎え、1年後にはその割合は87%に増加した。 スタディ2でも同様の結果が得られた。16名(80%)でTMAイベントが消失し、18名(90%)で血液検査値が正常化した。20名(100%)の患者で血漿交換/血漿輸注(PE/PI)が不要となり、新たに血液透析が必要になった患者は0名(0%)であった。26週間で血小板数とeGFRが有意に改善した。QOLも改善し、QOL評価が可能であった11名中8名(73%)で臨床的に意味のある改善が見られ、その期間は中央値で62週間であった。 26週間の試験期間終了後、ほとんどの患者は拡大試験に参加してエクリズマブの投与を継続した。投与開始から2年後のデータからは、エクリズマブが補体関連TMAの継続的な阻害薬であり、効果は継続的で、時間を追って腎機能が改善することが明らかとなった。スタディ1の拡大試験では、13名の患者が中央値100週間の治療を受け、血小板数が継続して改善し、26週時点よりも腎機能が改善していた。さらに、中央値約2年間の投与期間中に死亡した患者は居なかった。スタディ2の拡大試験では、20名の患者全員が中央値114週間の治療を受け、19名(95%)でTMAイベントが消失し、その割合は26週時点よりも高い値であった。スタディ2拡大試験では、PE/PIや血液透析が必要となった患者や末期腎不全(ESRD)に進行した患者は0名であった。 別の比較群のない後ろ向き臨床試験には2ヶ月齢から17歳の少年19名を含む30名が参加し、中央値16週間の治療を受けた。結果は2つの臨床試験と概ね同様であり、小児の患者ではTMA活性のサインが殊に低減し、血小板数が大きく増加した。少年等19名の内17名(89%)で血小板数が正常化し、8名(42%)で血液検査値が正常化し、8名(42%)でTMAが完全消失し、9名(47%)でeGFRの改善を経験した。4⁄8(50%)の小児患者で血液透析が不要となり、試験中に新たに血液透析が必要となった患者は居なかった。
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