雪が融解して生じる着氷性の雨
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/11 04:05 UTC 版)
「雨氷」の記事における「雪が融解して生じる着氷性の雨」の解説
「雪の生成までのプロセスについては「降水過程」、「雪」を」も参照 通常、大気は上に行くほど気温が下がるが、たとえば上空の高さごとに風向が異なり、上下の冷たい空気の層(冷気層)の間に暖かい空気の層(暖気層)が侵入すると、逆転層が発生する。逆転層発生の要因は、ほかにも地形による寒気のブロックなどがある。 上下の冷気層が気温0℃以下、真ん中の暖気層が気温0℃以上のとき、上の冷気層の雲から雪が降ると、暖気層で融解して雨、冷気層で再冷却され着氷性の雨となる。 雪(固体)→加熱による融解→雨(液体)→冷却→着氷性の雨(過冷却の液体) ただし、前記のような逆転層があっても、必ずしも着氷性の雨にはならない。逆転層があっても、暖気層で雪が完全に融けないで雪となる場合もあれば、冷気層で凍結してしまい氷の粒が降る凍雨として観測される場合もあるからである。実際、着氷性の雨より凍雨の方が遥かに発生頻度は高い。 具体的に暖気層の厚さが何百メートルないし、気温が何℃というようなデータはいくつか報告されているが、事例によりまちまちで定性的ではない。 1956年3月19日、20日に着氷性の雨により筑波山の山頂を含む標高700メートル以上の地域に雨氷が発生した例では、雪の結晶が最初に生成される雲頂(雲の最高部)高度6,000メートル、0℃以上の暖気層が3,000 - 1,400メートル、0 ℃以下の冷気層が1,400 - 800メートルであった。仮に雨粒の直径を1ミリ、落下速度を毎秒6メートルとすれば、暖気層で融解した雨粒はおよそ100秒かけて過冷却となり、標高700 - 800メートルの地表に達して雨氷を生じさせる。 アメリカのいくつかの都市で着氷性の雨発生時の大気構造を調べた調査では、暖気層は厚さ平均1,300メートル、暖気層気温の最高値は(地表からの)平均高度1,100メートル付近で約3.2℃、また冷気層は厚さ平均600メートル、冷気層気温の最低値は平均高度200メートル以下のことが多く約-2.9℃、また地表気温の平均は約-1℃であった。地点による差も大きいことが示された。 アメリカ・カナダで着氷性の雨の発生時の地上の気温を調べた研究では、約8割が1から-5℃の間、約2割が-5℃未満で、わずかに1℃以上の事例もあった。
※この「雪が融解して生じる着氷性の雨」の解説は、「雨氷」の解説の一部です。
「雪が融解して生じる着氷性の雨」を含む「雨氷」の記事については、「雨氷」の概要を参照ください。
- 雪が融解して生じる着氷性の雨のページへのリンク