陸上車両
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 01:23 UTC 版)
ほとんどの陸上車両では、車輪と地面との間にはたらく摩擦力を利用して、車両に運動を開始させたり、加減速や方向転換を行っている。走行中の自動車のタイヤは、接地面の前方では路面と粘着(固着)しているが、後方では滑りが生じているのが一般的である。粘着領域でタイヤは前後方向に変形しており、その復元力が自動車に加速・減速を生じさせる。局所的な復元力が最大静止摩擦力に達すると粘着は壊れ、路面との間で相対的に滑りながら元の形に戻る。接触面で発生する粘着摩擦とすべり摩擦の和をトラクションと呼び、車両の重量に対するトラクションの比をトラクション係数という:55。トラクション係数が理論上最大となるのはタイヤ接地面全体で滑り摩擦が生じているときで、このときトラクション係数はタイヤと路面の間の動摩擦係数と一致する。完全な滑り状態(空転・滑走)では車の制御が行えないので、トラクションが路面の摩擦を越えない範囲で運転するのが最適とされる。 粘着式鉄道とは、自動車のタイヤと同様に車輪とレールとの間の摩擦力を利用して駆動力を生む方式を指す。列車の重量に対する駆動力の比は粘着係数と呼ばれる。 自動車のエンジン出力を伝達するトランスミッションのうち、無段変速機(CVT)などは摩擦力を利用して力を伝える。 ブレーキとは、摩擦の原理を利用して乗り物の運動エネルギーを熱に変換することで減速を行う仕組みである。ディスクブレーキでは回転するブレーキディスクとそれを挟み付けるブレーキパッドとの間の摩擦を利用する。ドラムブレーキでは、ブレーキシューを回転する筒(ブレーキドラム)に押し付けて摩擦を生む。ブレーキディスクはドラムよりも冷却が容易な利点がある。ブレーキパッドの摩擦材は繰り返しの利用や摩擦熱による高温に耐える必要がある:231-234。 道路のすべりやすさ(en:road slipperiness)は自動車の設計と安全性における重要な要因である。 スプリット路(英語版)とは、路面の摩擦係数が左右の車輪で異なる状態をいい、非常にスリップの危険が高い。 道路の表面構造(英語版)はタイヤと路面との相互作用に影響を及ぼす。
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