門脈圧亢進症とは? わかりやすく解説

門脈圧亢進症

門脈は,腸管からの静脈(上腸間膜静脈と下腸間膜静脈)と脾臓からの静脈肝臓流れ込む大きな静脈通り道です(図).肝臓運ばれる血流の3割が肝動脈から,7割が門脈経由して運ばれます.この多く血流肝臓に運ぶ門脈流れ悪くなる門脈の圧が高くなります門脈圧が高くなる血液脾臓たまって脾臓大きくなったり(脾腫),食道経由して心臓流れ血流増えて食道の静脈拡張したり(食道静脈瘤),静脈から血液中の血球以外の成分(獎液)が漏れ出てお腹にたまる(腹水)が発生します
原因としては,肝前性(肝臓流れ込むまでの門脈障害),肝内性(肝臓内の門脈路の障害),肝後性(肝臓から心臓までの静脈路障害)の3種類に分類されています.もっとも多い原因は,肝前性の場合で,先天性門脈細かった一部しかできていない場合で,特発性門脈圧亢進症と呼ばれています.赤ちゃん時期臍帯から直接肝臓胎盤からの栄養を運ぶ経路があり,生まれてすぐにおへそに炎症がおきたり,おへそに入れたカテーテル炎症起こすと,門脈閉塞され原因になることがあります.肝内性で多いのは,肝硬変です.肝細胞障害され傷んだ部分線維でおきかわり肝臓自体固くなり,門脈血流十分に受け入れることができなくなります.肝後性とは,肝静脈から心臓までの流れ悪くなり,肝臓からでてゆく門脈肝臓たまってゆく状態です.
検査所見では,脾臓血液がたまるため壊される血球増え貧血白血球数減少します.血小板少なくなり,5万より低下する出血傾向がでてきます.
CT超音波検査脾腫腹水みつかります血管造影門脈閉塞部位調べる事ができます門脈流れなくなっている場合は,そのまわり小さな血管大きくなって肝臓流れ込む側副血行路が発達しています.これを海綿血管腫変化呼んでいます(図).
食道静脈瘤破裂する大出血の原因となるため,内視鏡用いて拡張した血管閉塞させる内視鏡的硬化療法が行われます脾腫に対しては,脾臓をとってしまうと重症感染症危険性があるため,脾動脈一部閉塞させ70?80%の部分梗塞させる部分的脾動脈塞栓術が行われます門脈圧を低下させる手術をしては,門脈血流下大静脈腎静脈に流す新し経路作成するシャント手術ありますいずれの治療にあたって専門施設での治療が必要です.
小児見つかった場合は,成長につれて改善されるとされていますが,必ずしもそうでない場合があり,慎重に経過観察して行く必要があります
門脈圧亢進症

門脈圧亢進症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/24 16:02 UTC 版)

門脈圧亢進症(もんみゃくあつこうしんしょう、英語: portal hypertension)は、消化管から肝臓血液を運ぶ門脈圧が上昇する疾患群。

概念

門脈圧が上昇する病気をまとめて門脈圧亢進症と言う。(ここでいう門脈は腹部の門脈で、下垂体の門脈ではない。)

病態

腸管から吸収された栄養や毒素は、門脈系を通って肝臓内で処理されたのち、下大静脈を通って全身へと送られる。肝硬変などにより門脈圧が上昇して逃げ場を失った血流は、臍静脈、左胃静脈、下直腸静脈等を迂回して肝臓を介さずに直接体循環へ流れる。本来の道筋をショートカットする事を短絡シャント)と言い、門脈系から門脈を経ずに体循環へ流れる事を門脈体循環短絡という。

原因

門脈は消化管から肝臓へ流れる血管であり、肝臓の前、肝臓の中、肝臓の後ろの血管が詰まることで門脈圧は上昇する。阻害部位によって以下のように分類される。

症状

腹部静脈の怒張。その他、門脈圧亢進の原因となる疾患によってさまざまな症状を呈する。(肝硬変ではエストロゲン代謝障害によるクモ状血管腫、手掌紅班など)

合併症

  • 肝性脳症
    肝臓障害による神経障害を肝性脳症と言う。
    • 原因
      門脈体循環短絡によって、腸管内細菌によって産生されたアンモニアなどの毒素がシャントのため、直接体循環に流れ出るために、神経系に障害が現れる。
  • 胃・食道静脈瘤
  • 門脈圧亢進症性胃腸症
  • 難治性腹水

検査

治療

  • 原因疾患による。合併症の対症療法も併せて行う。
    • 門脈圧を低下させる為にβブロッカー[1],ARBが投与されることがある。腹水のコントロールの為に利尿剤が使われる。アルブミン値を上昇させて腹水をコントロールするとともに、肝性昏睡の原因と成るアンモニアを減らすため、分枝鎖アミノ酸製剤(BCAA)の投与,緩下剤・抗生物質による腸内細菌叢のコントロールや食事療法が行われる。
    • 合併症の中で最たる物は胃・食道静脈瘤破裂であり、内視鏡的硬化療法(Endoscopic Injection Sclerotherapy:EIS)や内視鏡的食道静脈瘤結紮法(Endoscopic Variceal Ligation:EVL)、バルーンタンポナーデ法、透視下に行うバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(Balloon occulted -Retrograde Trasvenous obliteration:B-RTO)が行われる。
  • 以前は開腹して門脈=下大静脈短絡術などを施行していた。これはアンモニアなどを含む腸管からの血流が直接大循環に流入するため、合併症がみられることがあった。
  • 最近は血管内治療として経頸静脈的肝内門脈静脈短絡術(Transjugular Intrahepatic Portasystemic Shunt:TIPS)が試みられている。これは、頸部よりカテーテルを挿入し門脈と肝静脈を直接つなぐ手術である。

診療科

脚注

  1. ^ 杉町圭蔵,他. 門脈血行異常症 (門脈圧亢進症) による上部消化管出血に対する塩酸プロプラノロールの予防効果および安全性の検討. 肝臓 2004;45(5):248-260.

外部リンク


門脈圧亢進症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 05:03 UTC 版)

オベチコール酸」の記事における「門脈圧亢進症」の解説

動物実験OCA肝内の血管抵抗改善し、門脈圧亢進症の治療有用であることが示唆された。非盲検の第IIb相臨床試験実施中である。

※この「門脈圧亢進症」の解説は、「オベチコール酸」の解説の一部です。
「門脈圧亢進症」を含む「オベチコール酸」の記事については、「オベチコール酸」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「門脈圧亢進症」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



門脈圧亢進症と同じ種類の言葉


固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「門脈圧亢進症」の関連用語

門脈圧亢進症のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



門脈圧亢進症のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
日本小児外科学会日本小児外科学会
Copyright© 1999-2025 Japanese Society of Pediatric Surgeons.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの門脈圧亢進症 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのオベチコール酸 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS