郷土料理としての皿鉢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 04:44 UTC 版)
婚礼や葬式、法事や神祭のほかにも出生の名付けの祝いや節句、新築祝いや六一(ろくいち)と言われる還暦の祝いなど、宴を催すと言えば皿鉢料理であり、何十枚と用意する大きな宴もあった事から、出された皿鉢の枚数を示す事で宴会の規模が解るとも言われていた。 専門店の仕出しが主流となる以前には、行事の度事に手先の器用な者が中心となり近隣が寄り集まって皿鉢料理が作られており、小規模な神祭や仲間内の酒盛りなどの場合は、各々の家の主人が仕入れや調理を行っていた。 また、他に本職を持ちながらも皿鉢料理に造詣が深く料理好きで器用な人がどの地域にも二、三人はおり、「器用やり」とも呼ばれ料理人として冠婚葬祭や講など大勢の客の集う行事の際に雇われては料理の腕を振るってもいた。交通が未発達だった昭和初期頃までは、海岸部や山間部などそれぞれに採れる農水産物の特徴を生かした皿鉢料理があり、「器用やり」の料理人達は先人から伝えられてきた地域ごとの盛り付けに関する決まり事や縁起を重んじ、「組み物」は祝儀の場合は中高に盛り不祝儀の場合には中低に盛る事や、食材を三角に切るあるいは作るといった様々な習俗を守って皿鉢料理を作っていた。 時代が移り、交通網の発達により食材の流通が活発になるにつれ、皿鉢料理の地域的特徴は薄れていった。 昭和30年代以降、「器用やり」の料理人達は徐々に姿を消し、現在では皿鉢料理のほとんどが仕出し店や料理屋など専門家の手で作られている。 かつては皿鉢に欠かせない料理であった「鯛めんの皿鉢」や「蒸し鯛の皿鉢」をはじめ、唐芋に松の枝葉を刺して老松見立てとし生(なま)を盛り合わせた「松の皿鉢」や、カレイの皮を帆に中骨を船体に「はつ」の刺身を波に見立てた「宝船の皿鉢」など、還暦や長寿を祝う皿鉢や、大平に盛られた汁物やぜんざいの皿鉢など、今ではほとんど見られない伝統皿鉢料理となっている。
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