違憲審査の対象
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 06:40 UTC 版)
日本国憲法第81条は「一切の法律、命令、規則又は処分」を違憲審査の対象として定める。 対象説明法律 「法律」は国会の制定する形式的意味の法律を意味する。 命令 「命令」には行政機関が制定するもの一切が含まれる。 規則 「規則」には議院規則や最高裁判所規則も含まれる。なお、会計検査院規則や人事院規則については「命令」に含まれるとする説と「規則」に含まれるとする説がある。 処分 「処分」には行政機関の処分(行政処分)のほか、立法機関(国会)の処分、司法機関(裁判所)の処分も含まれる(通説及び判例は裁判所の判決も含まれると解する。昭和23年7月8日最高裁大法廷判決参照)。 条例 憲法81条の列挙には条例が挙がっていないものの国内法規範であり一般に違憲審査の対象に含まれると解されているが、その根拠としては「命令」に含まれるとする説と「法律」に含まれるとする説があり学説は分かれている。 判例 大審院の判例と高等裁判所の判例とは、最高裁判所小法廷で変更することができる。最高裁判所自身の判例の変更は、必ず全員の合議体である大法廷でこれをしなければならない。また裁判所法10条は、最高裁判所は、「当事者の主張に基いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを判断するとき(意見が前に大法廷でした、その法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するとの裁判と同じであるときを除く)」、「前号の場合を除いて、法律、命令、規則又は処分が憲法に適合しないと認めるとき」、「憲法その他の法令の解釈適用について、意見が前に最高裁判所のした裁判に反するとき」については小法廷で裁判をすることはできないと定めている。 条約 憲法81条は違憲審査の対象として条約を挙げていない。憲法と条約と形式的効力の優劣については条約優位説と憲法優位説が対立する。条約優位説では当然に違憲審査の対象とならないとみる。これに対し、憲法優位説に立つ場合、憲法81条の文言や国家間の合意であるという条約の特殊性から違憲審査の対象とはならないとする否定説(消極説)と、「規則又は処分」として違憲審査の対象となるとする肯定説(積極説)(通説)、このほか部分的肯定説などの学説があり対立している。なお、条約が違憲審査の対象となる場合には憲法81条の列挙との関係が問題となるが、「法律」に準じるものとして違憲審査の対象となるとする説と憲法81条の列挙は例示とみるほかないとする説がある。
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