違憲判断の効力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/08 06:40 UTC 版)
最高裁判所の違憲判断の効力については一般的効力説と個別的効力説、このほか法律委任説もあり対立している。 名前内容一般的効力説 法令等の違憲判断は議会の手続を経ずとも一般的効力を生じ客観的無効となる。日本国憲法第98条第1項から違憲の法律は当然無効であり、また、一方の事件では違憲とされたものが他方の事件では合憲とされることは法的安定性を害し日本国憲法第14条に定める法の下の平等にも反することを根拠とする。この説に対しては事実上裁判所による消極的立法を認めることになり国会を唯一の立法機関とした日本国憲法第41条に反すること、過去の事件に遡って一般的遡及効を生じるとすると法的安定性を害すること、下級裁判所の判決に論理が貫徹できないことなど問題点が指摘されている。 個別的効力説(通説) 法令等の違憲判断は当該事件においてのみ適用が排除される個別的効力にとどまる。通説は日本では付随的審査制が採用されており、また、法律を一般的に無効にすることは事実上の消極的立法を認めることになってしまい司法権の限界を超えることになるとして個別的効力にとどまるとする。 法律委任説 法令等の違憲判断の効力は法律に委任されている。ただし、現在、最高裁判所の違憲判断の効力について規定した法規は存在しない。 最高裁判所の違憲判断の効力が個別具体的な事件にとどまるとすると法的安定性を害するのではないかという問題を生じる。そのため、個別的効力説からは補完的に最高裁判所で法令違憲の判決があった場合、国会は早急に改廃手続をとるべきであり、また、行政府はその執行を差し控えるべきことが期待される(いわゆる礼譲期待説)あるいは一定の義務があると説かれることが多い。実際の運用では、尊属殺重罰規定違憲判決(最大判昭48・4・4刑集27巻3号265頁)においては、法務省通達による通常の殺人罪(刑法199条)の適用措置が講じられ、過去に重罰規定が適用された事件については内閣による個別恩赦で対応がなされた。
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