賃貸人の承諾がある転貸
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 16:45 UTC 版)
賃借人Bが賃貸人Aの承諾を得て行った転借人Cへの転貸は当然有効であり解除原因とならない(612条1項参照)。適法な転貸借がある場合、Bの有する賃借権が対抗要件を具備する限り、Cが自己の転借権について対抗要件を備えていなくても、Cは第三者に対してBの賃借権を援用して自己の転借権を主張することができる(最判昭39・11・20民集18巻9号1914頁)。 賃貸人-賃借人間賃貸人Aと賃借人Bとの間では従前の法律関係が継続する。賃貸人Aが賃借人Bに対してその権利(賃料支払請求権等)を行使することを妨げない(613条2項)。 賃借人-転借人間賃借人Bと転借人Cとの間に新たに賃貸借の法律関係が成立する。 賃借人が適法に賃借物を転貸したときは、転借人は、賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として、賃貸人に対して転貸借に基づく債務を直接履行する義務を負う(613条1項前段)。賃貸人Aと転借人Cは直接の契約関係に立たないため、本来、原則として両者間に契約上の法律関係は生じないはずであるが、民法は便宜を考慮して転借人Cは賃貸人Aに対して直接に義務を負うとしている。賃貸人Aは転借人かCら直接賃料を受け取ることもできるが、賃貸人に望外の利益を得させるためのものではないから、賃貸人が転借人に請求できる金額は、賃借料と転借料のうち低い方の金額が限度となる。2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で「賃貸人と賃借人との間の賃貸借に基づく賃借人の債務の範囲を限度として」の文言が追加された。例えば、上記の例で、AがBに対して賃料月額20万円で甲不動産を賃貸し、BがCに賃料月額30万円で賃貸している場合、AがCに請求できる金額は20万円である。BがCに賃料月額15万円で賃貸している場合、AがCに請求できる金額は15万円である。 転借人が負担する転貸人と賃貸人に対する賃料支払義務は、連帯債権の関係にあるといわれることがある。また、転借人は賃料を賃借人(転貸人)に前払いしている場合であっても、賃貸人に対抗することができない(613条1項後段)。 転貸がされている場合、もとの賃貸借契約が解除されたときに転借人が影響を受けるかどうかが問題となる。賃貸人がもとの賃貸借契約を債務不履行によって解除した場合には、転借人は目的物を使用収益する権利を失うとされている(最判平9・2・25民集51巻2号398頁)。この場合において転借人に対して延滞賃料の支払いの機会を与えなくてもよい(最判昭37・3・29民集16巻3号662頁)。 一方、賃借人が適法に賃借物を転貸した場合には、賃貸人は、賃借人との間の賃貸借を合意解除したことをもって転借人に対抗することができない(613条3項本文)。613条3項は2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で明文化された(判例は、賃貸人と賃借人がもとの賃貸借契約を合意解除した場合でも、特段の事情がない限り、転借人に合意解除の効力を対抗することはできず、転借人は引き続き目的物を使用収益することができるとしていた(最高裁昭和37年2月1日判決)。ただし、その解除の当時、賃貸人が賃借人の債務不履行による解除権を有していたときは、この限りでない(613条3項ただし書)。
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