説の発展
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/03 07:35 UTC 版)
ラヴォアジエは『化学原論』に先立つ1783年にラプラスとの共同研究で、化学変化の前後で熱量(カロリック説の言葉でいう、カロリックの量)は保存するという法則を提唱した。これは熱量保存則と呼ばれる。この法則自体はカロリック説を前提とした理論ではなく、実際ラプラスは当時熱運動説の支持者であった(後に熱物質説へと転向)。しかし、結果的に熱量保存則は、熱力学第一法則が確立されるまで、カロリック説に立脚する熱学の基本法則とされるようになった。 こうして基礎が形作られたカロリック説はその後、ゲイ=リュサックやジョン・ドルトンによる気体の熱的研究によって進められてゆくのだが、はじめは熱容量などの扱いをめぐって2派に分かれていた。 1つは、物質に含まれるカロリックの量は、その物質の熱容量に比例するという考えである。例えば、物体が固体から液体になる時には、熱容量(比熱)が大きくなるため、物質が含むことの出来るカロリックの量が多くなり、物体は周囲からカロリックを吸収する。こうした熱容量の変化は、気体の膨張や圧縮の際にも起こり、気体が圧縮された時は熱容量が減少するため、物質が含むことの出来るカロリックの量も少なくなり、余ったカロリックが熱として周囲に放出される。この現象は、水を含んだスポンジを圧縮すると、スポンジから水が溢れ出す現象に例えられる。この説は元々ブラックの弟子のウィリアム・アーヴィンによって生み出されたもので、後にアデア・クロフォード(en)が発展させた。カロリック説登場後は、ドルトン、クレマン、デゾルムなどがこの説を支持した(以下、杉山に倣って、この説を「アーヴィン流」と呼ぶ)。 もう1つの考えは、カロリックには、温度の変化を引き起こすものと、引き起こさないものの2種類あるというものである。温度の変化を引き起こさないカロリックは、物体に束縛されている。これを潜熱と呼ぶ。物体が固体から液体に変わる時は、物体が受け取った熱の一部が潜熱となったと解釈できる。この説ははじめブラックによって考えられ、後にラヴォアジエ、ゲイ=リュサック、ラプラスによって進展した(同様に、これを「ラプラス流」と呼ぶ)。
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