語形変化による否定表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/21 05:11 UTC 版)
述語の形を変化させることで否定を表す。例えば日本語の動詞の否定では否定の接尾辞が用いられ、ペルシャ語では接頭辞が使われる。 他の屈折要素と融合している場合もある。例えばナナイ語では否定節で特別な時制標識を用いる。 一般には文法的な法の一種として「否定法」とされる。 また否定形が肯定形と全く異なる形態をしている場合もある。例えば日本語「ある」-「ない」など(文語体や関西弁は「あらず」、「あらへん」という否定形を使う)。 日本語では動詞に対しては未然形に助動詞「ない」・「ぬ」が接続した形で否定する。「ない」・「ぬ」は独立性のない接尾辞と考えるのが適切である(助詞「は」が介入した場合「*書か-は-ない」でなく「書き-は-しない」と言う)。一方形容詞・形容動詞の否定には「ない」を使うが、これは学校文法では助動詞でなく補助形容詞と呼び、「赤く-は-ない」というように独立性があり、またこの「ない」には本来の意味が残っている(「ない」を肯定形の「ある」に入れ替え「赤くはある」とすることもできる)。 このほか、動詞や形容詞を単独に否定することができず「…であるということはない」のように文(節)を否定する言語もある。 言語における否定で注意すべき点として、否定を他の法観念(可能・必然・許可・義務など、話者の判断が介入する)と組み合わせた場合には、意味的な否定(論理的否定)と形式的な否定が一致しない場合もある。意味的な否定は上記の様相論理学における否定として扱うことができ、例えば許可「…してよい」の意味的否定は不許可=禁止「…してはならない」、義務「…しなければならない」の意味的否定は否定の許可「…しなくてよい」である。しかし英語で must not は「…してはならない」または「…はありえない」を表す。つまり not によって、助動詞(あるいは文自体)を否定する(外部否定)のではなく、動詞不定詞を否定するのだ(内部否定)と考えるべきである。それに対し cannot は can の否定(不可能「…できない」または「…はありえない」:外部否定)と考えてよい。may not は場合によって意味が異なり、禁止「…してはならない」(must not とほぼ同じ意味;ただし発話で not を強調すると「…しなくてよい」の意味にもなる)、または否定の可能(不可能ではない)「…でないかもしれない」になる。 上記のような明らかな否定語以外にも、意味的に否定に近い語・表現もある。英語でいえば、"only~"(文脈による)、"few"、"scarcely"などがある。これらに相当する日本語表現では「~しかない」「ほとんど~ない」「滅多に~ない」と否定を明示することが多い。
※この「語形変化による否定表現」の解説は、「否定」の解説の一部です。
「語形変化による否定表現」を含む「否定」の記事については、「否定」の概要を参照ください。
- 語形変化による否定表現のページへのリンク