語形融合の基準
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/05/28 22:58 UTC 版)
ドイツ語の動詞の現在時制のパラダイムでは、一人称複数形と三人称複数形が同音である。たとえば、表 1 の spielen ‘play’ の例では、これらの語形は両方とも spielen となる。しかしそれだけではなく、多くの場合、三人称単数形と二人称複数形も同音(表 1 では spielt)となる。 表 1. ドイツ語の動詞の現在時制のパラダイムの例 (spielen ‘play’)1 単(ich) spiele ‘I play’ 2 単(du) spielst ‘you play’ 3 単(er/sie) spielt ‘he/she plays’ 1 複(wir) spielen ‘we play’ 2 複(ihr) spielt ‘you play’ 3 複(sie) spielen ‘they play’ ただし、この場合、一人称複数形・三人称複数形が同音 (spielen) であることと、三人称単数形・二人称複数形が同音 (spielt) であることの間には、次のような違いがある。そのため、前者は語形融合の例であるが、後者は単なる偶然の一致と考えられる:174。 まず、前者の組み合わせは、あらゆる動詞のパラダイムで同音になるが、後者の組み合わせは、一部の動詞のパラダイムでは同音にならない。たとえば、geben ‘give’ のように、二人称単数形と三人称単数形で語幹が母音交替する動詞では、三人称単数形は gibt、二人称複数形は gebt となり、同音にならない。 また、これに関する違いは文法的にも認められる。例文 (1) のように、「A または B」という意味の名詞句が主語の場合、動詞は A と B の両方に人称・数が一致しなければならない。(1) では、A も B も三人称単数なので、動詞の形は三人称単数形 spielt となる。 (1) Entweder Ballack oder Klose spielt gegen Bulgarien. either Ballack or Klose plays against Bulgaria ‘Either Ballack or Klose will play in the Bulgaria match.’:175 一方、例文 (2) では、一人称単数と二人称単数の組み合わせなので、どちらにも同時に一致するということはできない。そのため、一人称単数形 spiele も、二人称単数形 spielst も使えない。 (2) * Entweder ich oder du spiele/spielst gegen Bulgarien. either I or you play against Bulgaria ‘Either I or you will play in the Bulgaria match.’:175 ところが、例文 (3) のように、一人称複数と三人称複数の組み合わせの場合、動詞は一人称複数形=三人称複数形の spielen になる。このことは、これらの語形が融合していることを示している。 (3) Entweder wir oder sie spielen gegen Bulgarien. either we or they play against Bulgaria ‘Either we or they will play in the Bulgaria match.’:175 逆に、三人称単数と二人称複数の場合、語形が同音でも spielt を使うことはできない。これは、これらが偶然同音なだけで、異なる語形であることを示している。 (4) * Entweder Bierhoff oder ihr spielt gegen Bulgarien. either Bierhoff or you play against Bulgaria ‘Either Bierhoff or you will play in the Bulgaria match.’:175
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