語族の形成と認定方法
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/04 06:49 UTC 版)
「比較方法」を参照 いかなる言語であれ、次の世代へと継承されていくうちに、音韻論・形態論・統語論といった様々な領域において変化を被るものである。祖語から娘言語への分岐は、例えば、地理的・政治的な分離によって全ての話者に変化が共有されなくなり、元の言語共同体が徐々に別個の言語単位へと分かれた結果として起こる。なお、元から他の言語共同体に属する個人も、言語交替を通じて異なる語族の言語を採用する可能性があるが、その際、新しく採用された言語が基層言語の影響を受けることもある。 こうしたプロセスを経て、単一の言語から分化・拡散した諸言語の間には、「系統関係」(遺伝的関係、genealogical relation ship) があると言われる。系統関係の認定は、比較方法を通して行われる。 比較方法の基盤となるのは、言語の恣意性・音変化の規則性・自然の斉一性である。 まず、恣意性とは、言語記号の表現形式である音形と、そこで表現される意味との間に、必然的な結びつきが無いことを指す。例えば、「木」という記号は、tree・arbre・umthiであっても同じ意味を表せたはずである。 以上から明らかなように、記号の音形は (擬声語は例外として) 意味との関連が薄く、因果的な繋がりを持たないのが普通である。こうした音形と意味の任意性に鑑みれば、その可能な組み合わせは無限に存在すると言える。したがって、arbre・arbor・alberoのような、複数の言語間で見られる類似の記号は、共通の祖語に由来する同根語である可能性が高い もちろん、記号の類似をもたらす要因としては、これ以外にも、借用のほか、単なる偶然の一致が挙げられる。しかし、言語間に規則的な音韻対応があれば、偶然である可能性は低くなる。例えば、英語のfather, foot, fearとフランス語のpère, pied, peurを比較すると、f-とp-の対応が認められ、forとpourのような新たな一致が予測できる。一方、英語のboyと日本語の「坊や」に見られる一致は、この種の規則性を伴わない。そして、以上のような音韻対応が、比較的借用されにくい基礎語彙や、活用語尾などの文法形式に数多く認められるのであれば、言語間の系統関係はより尤もらしくなる。
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