共通の祖語
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/05 22:13 UTC 版)
スラヴ語派に属するすべての言語は、スラヴ祖語に起源を持つ。口蓋化という音韻変化を特徴とするが、後述する白樺文書問題によって、従来の仮説ではスラヴ語をまとめることが難しくなった。 現在の歴史言語学上の通説では、スラヴ語派はバルト語派との共通の祖先である「バルト=スラヴ祖語(英語版)」から生まれたとされている。この説によれば、紀元前3000年頃、バルト=スラヴ祖語の「原郷」(Urheimat)は現在のベラルーシ、ウクライナ、ポーランド、リトアニア、ロシア西部のあたりに位置していた。スラヴ語派とバルト語派は、この仮説上の言語から受け継いだ少なくとも289個の単語を共有している。スラヴ語派がバルト語派から分かれたのは紀元前1000年あたりであるとする研究者もいる。 過去に主張されたものとして、スラヴ語派は近接するバルト語派(リトアニア語、ラトビア語、古プロイセン語)とは根本的に異なり、アルバニア語から派生したとする説もある。これは、バルト語派からの強い影響は認めつつも、単に影響を受けただけにとどまり直接の祖先はアルバニア語であるとするものである。この説はソヴィエト連邦崩壊前後に盛んに唱えられた。しかし最近の研究によってこの説はほぼ否定されている。 最近の仮説では、スラヴ語派がゲルマン語派との共通祖語から分かれたとするものもある。11世紀ノヴゴロドの白樺文書(ru:Берестяные грамоты)に書かれたスラヴ語に第2次口蓋化が起こっておらず、ケントゥム語の特長を良く残しており、形態的にもよりゲルマン語に近いことが明らかになったため。スラヴ語の口蓋化は3次にわかれて発生したと考えられているが、第1次口蓋化が5世紀後半より開始された後、ゲルマン語との共通祖語の名残がまだあった第2次口蓋化以前の時代に、ノヴゴロド方言を含む古ルーシ語が分化していたことになる。
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