語彙・文法の規定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/13 04:05 UTC 版)
「用法基盤モデル」も参照 文法理論の一大勢力として、語彙を「動詞」や「名詞」といったように抽象化し、具体的な語彙ではなく、そういった抽象から文法(構文)が作られるものとする考え方がある。 認知文法においてはそれらと全く異なり、語彙や文法の間に明確な区分は認めていない。なぜならば、もともとあったものを言語学者が発見したのではなく、(言語学者が)勝手に区切りをつけただけではないか、という危惧を我々は完全には棄てきることができないからである(ibid.: 13)と認知文法の研究者は述べる。認知文法では語彙・文法の差をグレディエンス(段階性)のある一連のものと見なしている。 例えば我々はどこまでがレキシコンとして登録されており、どこまでが文法としてルール化されているのだろうか。単語(dog)、慣用的な熟語(cats and dogs)、コロケーション(Give me your …, Give me the …)、構文(send NP NP)、と考えていった場合に、変化するのはその抽象性(スキーマ性)でその差異は言語学者が区分したものに過ぎないのではないだろうかという仮定が成り立つのである。 そこで認知文法では、以下のように文法と語彙を規定する。 (1) 抽象度(スキーマ性)の高さ プロトタイプ的な語 > 一般的な語彙 > 文法標識(音韻的表示あり) > 品詞(音韻的表示なし) 一般的な語彙 > 種々のルール (2) 複雑性 プロトタイプ的な語 > 一般的な語彙 文法標識、品詞 > 種々のルール (3) 定着度 語彙項目 < 斬新な表現 しかし重要なことは,象徴的文法要素に「還元」できるという考え方は,従来の「語彙」や「形態」や「統語」などの存在を否定するものではない。これは「水分子」の存在が水素原子と酸素原子に還元できることが,水分子の存在を否定することには成らないのと同じである。それらがプリミティブな要素ではないと考えられていることを意味するのみである。また「連続性」を主張することが,それらの概念を否定することにも繋がらない。それは「青」と「緑」という色の境界は明確ではないと主張することが「青」と「緑」という色の存在を否定することには成らないのと同じである。(ibid.: 6-7)
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