試合前までの状況
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/27 04:01 UTC 版)
ブラジル戦を前にして日本は念入りに情報分析を行い、相手の長所を消すための対策を研究した。スカウティング担当松永英機やブラジル人GKコーチのジョゼ・マリオ が事前にブラジル入りして偵察し、ブラジル五輪代表の試合の映像を入手した。また、ブラジルの新聞を取り寄せ、細かな情報まで仕入れるなど綿密なスカウティングを行った。それらを元に、スターティングメンバーや選手交代のパターンを予想し、守備的な戦術を考えた。 前園などの攻撃陣は守備的な戦術を告げられ最初は反発したが、「最強のブラジルに勝つため」に受け入れた。 日本は、ブラジルの2トップはオーバーエイジのベベットと、断トツのチーム得点王サヴィオがスタメンで、試合が接戦になった場合、サヴィオに変わって高さもあるロナウジーニョ(ロナウド)が交代で出場すると予想。スピードがあるFWベベットにはDF鈴木秀人をマークにあて、サヴィオのマークにはロナウジーニョへの対応も想定し、空中戦も強いDF松田直樹をあてることにした。実際に試合ではスタメンも交代パターンも予想通りであった。キープレイヤーと目されるドリブラーの司令塔ジュニーニョ・パウリスタ対策としては、アジア予選のレギュラーボランチだった廣長優志を外し、左SBが本職である服部年宏のスピードを買って、ジュニーニョに密着マークさせることにした(この奇策には服部も驚いたという)。また、GKコーチのジョゼ・マリオは、強烈な左足でフリーキックのキッカーを務める事が予想される左SBロベルト・カルロスのシュート軌道を、日本の正GK川口能活に徹底的に叩き込んだ。 このように守備面で万全の手を打つ一方で、攻撃面では打てる手は少なかったが、オーバーエイジとして加入したセンターバックのアウダイールが直前での加入だったため、もう一人のCBロナウド・ギアロ(大会登録名ロナウド)や、GKジーダとの連係面に不安を抱えていることと、両CBが共にスピードがなかったため、「ブラジルCB2人の背後のスペースは数少ない狙い目だ」と選手たちに伝えていた。 アトランタ五輪本大会の1週間前に、ニューヨークで行われたブラジル五輪代表と世界選抜のチャリティーマッチを西野監督と山本コーチが偵察した。試合は世界のスーパースターを揃えた世界選抜チームに、ブラジル五輪代表が勝利。西野監督らは驚きを示す一方、ブラジル五輪代表は慢心して隙が出来るのではと考えたという。 ブラジル代表は当時、ロッカールームで自らを鼓舞し、同時に相手を威圧するために、全員が大きな声を出しながらウォーミングアップを行うことがあった。実際、この試合前にもブラジル五輪代表が行っていたが、事前にその情報を入手していた山本は試合前から精神的に飲まれないため、こちらも負けずに声を出せと日本代表選手にはっぱをかけ、ピッチに選手たちが出るまで、ずっと選手たちの側で日本代表選手たちを鼓舞し続けた。
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