記憶分野での貢献
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/07 15:59 UTC 版)
「ヘルマン・エビングハウス」の記事における「記憶分野での貢献」の解説
1885年、エビングハウスは画期的な『記憶について : 実験心理学への貢献』を出版し、学習と忘却のプロセスを記述するために自身で行った実験について書いた。 彼は今でも支持されている有意義ないくつかの発見をした。最初に挙げる忘却曲線は、ほぼ間違いなくエビングハウスの最も有名な発見である。忘却曲線は、学習した情報が指数関数的に失われることを示している。最も急激な記憶減少は最初の20分で起こり、最初の1時間を通しての減衰も著しいものがある。 この曲線は約1日後になだらかとなる。 エビングハウスによって記された学習曲線は、情報をどうやって速く学ぶのかについて言及している。最も急激な記憶増加は初回学習の後に起こっていて、その後は徐々に増加する、これは反復学習のたびに覚える新しい情報が少なくなる(以前の学習内容が記憶にあるため)ことを意味している。忘却曲線と同じく、学習曲線もまた指数関数的である。エビングハウスは系列位置効果(英語版)も文書に残しており、これは項目の位置がどれくらい想起に影響するかについて述べたものである。系列位置効果における主な2つの概念は直前性と初頭性である。直前効果(リーセンシー効果(英語版))は、直前に入ってきた情報ほど短期記憶に残っているので、思い出せる量も増加するというもの。初頭効果(プライマシー効果(英語版))は、反復学習が増えるとリストの最初にある項目がより良く記憶されて、長期記憶にも引き継がれることを指す。 もう一つの重要な発見が、記憶の貯蓄である。これは、情報が意識的にアクセスされていなくても潜在意識で保持される情報量を指す。例の実験でエビングハウスは項目のリストを完璧に想起するまで覚えたため、今度はいずれかの項目をもはや想起できなくなるまで、リストに目を通さなかった。その後で彼はリストを再学習し、今回の学習曲線と以前のリスト記憶をした学習曲線とを比較した。結果は、再学習のほうが全般的により速く記憶されており、この2つの学習曲線の違いが発生したのは、前回の「貯蓄」によるものだとエビングハウスは語った。エビングハウスはこのほか、不随意記憶(英語版)と随意記憶との間の違いに言及し、前者は「明らかに自然で、意志を伴わない行為」で何となく生じたものだが、後者は「意志の努力によって意識の中に」持ち込まれたものだとした。 記憶研究におけるエビングハウスの影響はすぐさま現れた。過去2千年間で記憶についての出版作がほとんどなかった中、エビングハウスの仕事が1890年代のアメリカにおける記憶研究に拍車をかけ、1894年だけで32の論文が出版された。この研究は、機械化された記憶術測定器(mnemometers)の開発と共に、もしくは記憶の研究と記録を支援する装置の機械開発と一緒に発展した。 彼の研究に対する当時の反応は大部分が肯定的だった。著名な心理学者ウィリアム・ジェームズは、この研究を「英雄的」と呼び、それらが「心理学の歴史における唯一の最も素晴らしい調査」であると語った。エドワード・ティチェナーもまた、記憶の話題に関するこの研究はアリストテレス以来の最大の事業だと述べている。
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