西欧マルクス主義
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/12 15:17 UTC 版)
第二次世界大戦以後、世界は、アメリカ合衆国を中心とする西側世界と、ソビエト連邦共和国を中心とする東側世界に対立する冷戦時代に入っていった。このことは、西ドイツと東ドイツに分裂を余儀なくされたドイツの思想界に決定的な影響を与えた。西欧のマルクス主義者は、ソ連型のマルクス主義(マルクス・レーニン主義、その後継としてのスターリン主義)に対して、異論や批判的立場を持つ者も少なくなかったが、最初に西欧型のマルクス主義を提示したのは哲学者のルカーチだった。ドイツのフランクフルト学派と呼ばれるマルクス主義者たちは、アドルノやホルクハイマーを筆頭に、ソ連型マルクス主義のみならず、西洋文明における伝統的理論を批判し、かかる理論が生み出した全体主義を批判する「批判理論」と呼ばれる新しいマルクス主義を展開した。これは、ヘーゲルの弁証法を基礎に、マルクス主義哲学と科学を統合し、非合理的な社会からの人間の解放を目指すというものであり、フロイトの精神分析を応用する。批判理論は、まず、デカルト的な主観・客観の二項対立を前提としている伝統的理論を批判する。このような対立図式は支配される客体としての自然を分析して観念する。そのため、学問は分析される対象ごとに分断され、専門家・技術化していくが、諸学問は、人間の解放を目指すという目的のため統合されなければならないのである。また、伝統理論は世界を支配される客体として自然の総体とみるため、現状追認のためのイデオロギーとして機能する。ゆえに、世界は、マルクス主義的な観点から、具体的な自然に対して労働を加えて作られたところの歴史的社会的なものの総体として把握されなければならない。さらに、批判理論はマルクス主義も批判する。魔術からの解放と合理化を目指した近代的な啓蒙の弁証法の起源は、マルクスが主張したような階級対立ではなく、人間と自然との生存を賭けた闘争である。したがって、伝統的な理論は信頼してきた理性は生に従属する道具的なものにすぎない。ゆえに、近代的な理性が伝統社会を全体主義に導いた真の犯人なのであるとする。
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