術式と予後
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/08 21:15 UTC 版)
損傷した腱や靱帯を切除したうえで、患者の反対側もしくは同一側の前腕(長掌筋腱など)や下腿、臀部、膝蓋腱などから正常な腱の一部を摘出し移植することで患部の修復を図る。 移植した腱が靱帯として患部に定着するまでには時間がかかるため、術後には長期に渡るリハビリを行う必要がある。まず、おおよそ2か月をかけてひじの可動域を元に戻していくトレーニングを行い、日常生活において支障なく腕を動かせるようにした後、軽めのウェイト・トレーニングを開始する。徐々にウェイトの量を増やしていくのと並行し、腕全体を強化するための様々なトレーニングを始め、日常生活や通常の運動ができるまでに回復したと判断された時点で投球を再開することになる。通常、ここまでの回復に約7か月を要するため、実戦復帰には12か月から15か月が必要となり、一般的には術後18か月で故障前と同レベルの投球ができるようになると考えられている(そのため、1シーズンから2シーズンを棒に振ることになる)。実戦復帰後も球団によって厳しく球数を制限されるため、完全復帰は翌シーズン以降になる。その間、ベテラン選手や複数年契約などの大型契約を締結している選手はそのまま契約を更新・継続して翌シーズン以降の復帰まで猶予するが、プロでの経験年数が少ない若手選手は育成選手として契約を行い、完全復帰の目途が立った段階で改めて支配下登録を結ぶこととなる。 ただし、これは患者が投手の場合で、野手の場合はより短い期間で復帰できる場合が多い。野手の術後はBABIPや長打率、HR/FBの数値が低下する傾向があるというデータがある。 また、日本人選手の術後については、アメリカのスポーツ医学に携わる外科医から「アメリカや中南米の選手とアジアの選手の細胞が組成していくスピードは違うため、日本人選手を12か月から16か月で復帰させたとしても、靭帯の強度や周辺の組織の復元度はアメリカや中南米の選手とは同じにならない。日本人選手には時間的な猶予を多く与えることが必要だ」という意見もある。
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