衆議院の自主解散の問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/06 02:04 UTC 版)
「衆議院解散要求決議案」の記事における「衆議院の自主解散の問題」の解説
衆議院の解散権の帰属について学説の中には衆議院による自主解散を認める学説も存在するが、議院の多数派により少数派の議員の地位を失わせることとなり、それを可能とするためには憲法・法律上の明文の根拠が必要であるとして、多数説はこのような解釈に否定的である。自主解散の制度を認めるとしても実際には衆議院でそれが可決されるためには衆議院で多数派の支持を得ることが必要となる。したがって、今日の学説では、衆議院における多数派が内閣との関係において、対立関係になく解散を望むのであれば内閣に解散を求めることで足り、対立関係にあり内閣が応じなければ不信任すればよく、憲法もこのような運用を予定しているとされ、また、実際にも衆議院解散は憲法69条の場合に限るとする説(69条説)をとらない限りは実益のある議論ではないと考えられている。 かつて初期の国会において尾崎行雄が自主解散制度を確立すべきとして衆議院の解散に関する決議案を提出したことがある(ただし、その内容は衆議院の議決ではなく国会の議決によって衆議院の解散を行うべきとし、衆議院と参議院の議決が異なったときには衆議院の議決によるべきとするものであった)。 衆議院の自主解散に関する決議案の例議案提出日提出者議題名内容議案終結日採決可否票差備考1948年2月18日 尾崎行雄 衆議院の解散に関する決議案 国会の決議による自主解散制度の確立 7月5日 廃案 - - - 直接上程・委員会付託のいずれもされぬまま廃案(※1) 1948年11月11日 尾崎行雄 衆議院解散に関する決議案 11月30日 廃案 - - - 議院運営委員会にて審査未了・廃案(※2) ※1 提出者は委員会審査省略案件としてその旨の要求書を付したが、議会解散に関する議案は日本国憲法施行下で初の事例であったため、1948年5月17日の議院運営委員会において(委員会付託とするか委員会審査省略とするかを含め)取扱いが協議されたが結論が出ず、委員会への付託も本会議への直接上程もされぬまま会期終了となった。 ※2 提出者は委員会審査省略案件としてその旨の要求書を付したが、議院運営委員会の決定により、審査省略(直接上程)を認めず同委員会に付託することとされたため、当該要求書は提出がなかったことにされた。これを受け同委員会で審査がなされたが、未了のまま会期終了となった。なお、これに関連して同月16日の本会議で同提出者が「衆議院の解散に関する緊急質問」を行い、内閣総理大臣吉田茂が答弁している。 ※1及び※2の決議案は、時の議院構成・政情等への不満をもとに自主解散又は内閣による解散を求めた即時的なものではなく、国会の決議による自主解散の普遍的な制度を確立することを求めたものである。
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