薬物依存症患者を治療させる発想がないという批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/19 21:47 UTC 版)
「ダメ。ゼッタイ。」の記事における「薬物依存症患者を治療させる発想がないという批判」の解説
松本俊彦によれば、日本人は法律を守る人も多いので、処方薬など合法の薬物の乱用が深刻になっており、「ダメ。ゼッタイ。」では限界にきており、次の段階に進む必要があるとしている。 水谷修は、薬物乱用防止教育(英語版)に携わる教師自身が誤ったイメージを持っているとし、その原因は、日本の「だめ。絶対。一度やったら人間をやめることになる」という「脅しの予防教育」であり、薬物に関する正しい知識を身につけることは重要だが、すでに薬物を乱用している者には、何も対応していないとする。つまり、水谷によれば、薬物依存症の場合は、医療を受けさせなければならず、こうした予防教育は、病気に対しほぼ無効であると批判している。 DARC代表の近藤恒夫の指摘では、「ダメ。ゼッタイ。」が、犯罪者のレッテルを張り、犯罪者というレッテルによって、日本では社会復帰が難しくなり、薬物依存症から回復するという発想がないと指摘している。近藤とデーブ・スペクターは、以下のような点を指摘している。 薬物依存症回復のために、協力者を得にくいのは人格否定をし、薬物依存症が病気であるという発想がないためである。 アメリカ合衆国には、ドラッグ・コート(薬物依存専門裁判所)があり、司法によって治療プログラムを行い、そうしたドラッグ・コートが2500施設はある。 ハーム・リダクションという害を減らす政策では、ヘロインの依存症者に対し、注射器を配ることで、後天性免疫不全症候群(AIDS)などの感染症を減らすことを目的としている。オーストラリアでの薬物依存症対策のCMに、It's only call というCMがあるが、薬物によって倒れた時には、真っ先に緊急通報用電話番号へ電話し、救急車を呼んで応急処置を求めることを促している。 ダメゼッタイでは治療、他者への相談といったことが行いにくい雰囲気が作られ、治療窓口へつなげるということに対しては逆効果で、実際に治療につながるまで諸外国より多くの年月を要してしまっているという指摘もある。 標語の検討会の委員で麻薬・覚せい剤乱用防止センター理事長の藤野彰は、標語は「薬物を使ったことのない人に向けた予防目的のもの」であり、偏見を生むという批判は「誤解、曲解に基づくものだ」との意見を表明している。一方で標語の及ぼす悪影響について調査研究を依頼しており、「もっと良い言葉があれば、それも使う」「悪影響があるならば誤解を正していく」と発言している。
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