船尾水密扉設置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/22 15:47 UTC 版)
「十和田丸 (初代)」の記事における「船尾水密扉設置」の解説
ディーゼル化等により、車両甲板から機関室への水密性が確保されたため、本船のような船内軌道2線の車載客船では、船尾水密扉の設置は安全上必須ではなかった。しかし、客船として更なる安全性向上を目指し、また本船では船尾1線のため、小型の船尾水密扉で対応できたこともあり、加えて、喫緊に実用化の迫られていた船尾3線の客載車両渡船(デッキハウス船)用大型船尾水密扉実用化への試作的な意味もあり、車載客船・車両渡船としては世界で初めて、船楼端隔壁の強度、すなわち付近の船体外殻と同等の強度を有する船尾水密扉が設置された。このため、車両格納所の容積も総トン数に加えられた。 この船尾水密扉は、船尾開口部上縁にヒンジで取り付けられた船尾の軌道1線分をカバーする鋼製の上下2枚折戸式船尾扉で、中央部のヒンジで“く”の字に屈曲し、シャクトリムシのように、この屈曲部分を後方へ突出しつつ、船尾扉下縁両端を船尾開口部両縁のガイドウェイに沿わせて上方へ開き、全開位置では折り畳まれた状態で、開口部直上に垂直に立てられてロックされる構造であった。動力は端艇甲板に設置された電動ウインチで、下部扉下端両側のガイドローラーに固定された左右1対のワイヤーを、それぞれ一旦船尾開口部上縁両端の船尾扉ヒンジよりもやや高い位置で船体に固定された左右1対の滑車で反転し、上部扉下端両側の滑車で再度反転したのち、端艇甲板より1層上のポンプ操縦室頂部の複数の滑車を経由して、端艇甲板のポンプ操縦室前方に設置した電動ウインチに巻き込む仕組みであった。水密ゴムパッキンは船体側の船尾開口部全周に装備されたほか、船尾扉屈曲部分の上部扉下縁にも装備された。船内軌道がこのゴムパッキンを装備した敷居を越える部分では、電動油圧式の跳上げレールとなっており、扉閉鎖時には船内側へ跳ね上げて、船尾扉下縁の水密性を確保した。さらに、扉閉鎖の最終段階では、下部扉を内側から4個の油圧式“締付け装置”で引き寄せて、船尾扉を開口部周囲のゴムパッキンに確実に密着させた。
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