羅や人悲します恋をして
作 者 |
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季 語 |
羅 |
季 節 |
夏 |
出 典 |
生簀籠 |
前 書 |
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評 言 |
俳句は一編の小説に匹敵するといわれるが、掲句はメロドラマを思い起させる。人を悲します恋であるから、純愛でなく不倫であるが、それ故に余計に恋慕の情が深く心の葛藤が滲み出ている。その他「鞦韆は漕ぐべし愛は奪うべし 三橋 鷹女」の句あるいは大川 栄策が歌っている山茶花の宿にある歌詞「愛しても愛しても ああ他人の妻」等が思い浮かばさせられ、テレビか映画を見ているような気分にさせられる。 真砂女とは面識がないが、生前テレビで度々拝見しているうちに好きな俳人となった。さらに真砂女の生家は千葉県鴨川である。鴨川は多くの海水浴場に恵まれ、また鴨川シーワルドを始めとして観光施設があるので夏季は観光客で道路が渋滞する。筆者は真砂女に所縁があるホテルが経営するリゾートマンションの会員で、夏には妻そして長男一家と鴨川に遊びに行き、ホテルの施設を利用するので真砂女に一層親しみを覚えた。 鴨川で今ひとつの観光名所は仁右衛門島である。島は周囲4キロメータの小島で源頼朝そして日蓮上人の縁の地である。島は陸から僅か20~30メータしか離れていないが橋がなく、船頭二人が艪を漕ぐ2丁艇で渡るので、それだけで詩情味が豊かになり、島には真砂女の句碑を始め著名俳人の句碑があるので、俳人にとっては、一度訪ねたら忘れられない観光地となろう。 真砂女は老舗旅館の末娘として生まれ、本来なら平穏で幸せな一生を終得る筈であったろうが、恋多き女性で最初の結婚に失敗してから波瀾な人生を送ったようで、それだけに良い俳句が沢山残せたのであろう。しかし晩年は多くの俳人に囲まれ、達観したことであろうことは「戒名は真砂女でよろし紫木蓮」「倖せの真只中の屠蘇を干す」などの句から伺える。 |
評 者 |
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備 考 |
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