統計の不足
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/27 05:59 UTC 版)
日本において年齢主義と課程主義の比較を論ずる際のもう一つの大きな問題は、前期中等教育以下の学校での原級留置者数の統計が存在しないことである。このため、人数は重要なデータなのに「ほとんど存在しない」ということしか分からず、感覚的な判断しかできなくなっている。例えば、中教審事務局の発言 によれば「1980年ごろまでの中学校では、欠席日数が年間3分の2を上回ると原級留置になったが、2000年ごろになるとそういった例は極めて少なくなってきている」ということが理解できる。しかし、この談話のように単なる感覚的な証言でしか把握できず、数値的なデータは乏しい。そのような現状であるため、「成績不良による原級留置」や「出席日数不足による原級留置」や「海外留学による原級留置」などの分類ももちろんなされておらず、ましてそういった生徒たちの原級留置経験後の経過を知ることも困難である。就学猶予と就学免除の統計や、後期中等教育以上の学校での原級留置者数の統計は存在するにもかかわらず、この部分だけ統計が欠落しているのである。なお、公立学校であれば、各教育委員会は原級留置の報告を受けることになっているので、政府の指示があれば集計を開始することは可能な状態である。 また、どの学校の第何学年にどのくらいの年齢層の人が所属しているのかという統計も存在しない。文部科学省管轄のデータは、教員の年齢の統計こそあるものの、生徒の年齢の統計は存在しないのである。一応、総務省統計局管轄の国勢調査による自己申告データであれば、各学校ごとの年齢層がある程度判明するが、各学年ごとではないという問題、小学校と中学校が一緒に統計されているという問題、特殊教育諸学校も一緒に統計されているという問題、9月30日時点の年齢を基準にしているという問題がある。 なお、文部科学省の学校基本調査では、特別支援学校(盲学校・聾学校・養護学校)の年齢別在学者数の統計がされており、1歳刻みではないものの学齢超過者などの数値が分かる。また通信制高等学校についても同様の統計がある。ただし、依然として小中学校、全日制と定時制の高校のデータはないままである(調査票には記入欄もない)。 また国勢調査では、記入者の回答をそのまま掲載するのが原則であるにもかかわらず、7歳以上の幼稚園児・保育園児の数を意図的にゼロにしている可能性が高い。実際、報道や役所の文書などで、就学猶予を受けた7歳児が幼稚園に通う例が存在することは明らかである。このように、少数派の存在が意識的に抹消されているという問題もある。
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