経験的ポテンシャル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/01 08:35 UTC 版)
化学で用いられる経験的ポテンシャルは力場と呼ばれることが多いのに対して、材料化学分野では原子間ポテンシャルと呼ばれる。 化学におけるほとんどの力場は経験的なものであり、化学結合と関連する結合力、結合角、結合二面角、ファンデルワールス力および静電価と関連する非結合力の和から成る。経験的ポテンシャルはアドホックな機能的近似によって限定的に量子力学的効果を表わす。これらのポテンシャルは原子電荷、原子半径の推定値を反映するファンデルワールスパラメータ、平衡結合長、結合角、結合二面角といった自由なパラメータを含む。これらは、詳細な電子構造(量子化学シミュレーション)あるいは弾性係数、格子パラメータ、分光測定といった経験的な物理的性質に対してフィッティングを行うことで得られる。 非結合性相互作用の非局所的な特性のため、これらは系の全ての粒子間の弱い相互作用を少なくとも含む。その計算は通常、MDシミュレーションの速度のボトルネックである。計算コストを下げるため、力場はシフト打ち切り半径、反応場アルゴリズム、粒子メッシュ・エバルト和、あるいはより新しい粒子-粒子-粒子-メッシュ(P3M)法といった数値的近似を用いる。 化学力場は一般にあらかじめ設定された結合様式を用いる(非経験的動力学法を除く)。したがって、化学力場は化学結合の切断の過程や反応を露にモデル化することができない。一方で、結合次数形式に基づいたもののような物理学におけるポテンシャルの多くは、系の複数の異なる接続や結合の切断を記述することができる。こういったポテンシャルの例としては、炭化水素のためのブレナー・ポテンシャルやそれをC-Si-H系とC-O-H系にさらに発展させたものがある。ReaxFFポテンシャルは、結合次数ポテンシャルと化学力場とを組み合わせた完全な反応力場と見なすことができる。
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