精度と不確かさ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/19 02:01 UTC 版)
化学式から計算されたモル質量の精度は、物質に含まれる元素により異なる。例えば鉛の標準原子量は 207.2±0.1なので、鉛の化合物の相対モル質量 Mr を小数点以下第2位まで表記することは無意味である。一方で、リンやフッ素などの単核種元素のみからなる化合物の場合は、不必要なまでに高精度なモル質量が計算できる。天然に存在する元素の原子量は、リチウムを除いて有効桁数が少なくとも4桁ある。この精度は大抵の化学分析や実験室で用いられる試薬の純度より高い。リチウムの原子量には 6.941 が採用されることが多いが、市販のリチウム化合物のリチウムの原子量は 6.938 から最大で 6.997 まで変動する。 原子量およびそれに追随するモル質量の不確かさは、同位体の天然存在比が一定ではないことに起因する。対象試料のより正確なモル質量が必要ならば、対象試料の同位体存在比を測定または推定する必要がある。 各種測定試料中の同位体比は必ずしも一定ではない。例えば試料を蒸留するとより軽い同位体が気相に濃縮されることになり、気体のモル質量は液体のモル質量より小さくなる。 相対モル質量 Mr の値は、小数点以下第2位までの数値が示されることが多い。これは慣例によるものであり、必ずしも精度や不確かさが 0.01 g mol−1 であることを意味しない。 なお、原子量の基となる原子の相対質量は、静止して基底状態にある原子間の相互作用のない自由な状態における質量である。厳密には液体や固体など凝縮相においては蒸発熱や昇華熱に相当する分、さらに分子やその他化合物は化学結合エネルギーに相当する分だけ質量が小さくなる。しかしこれらの化学エネルギーによる質量欠損が通常の化学実験において問題になることはない。例えば固体炭素(黒鉛)についてみると、絶対零度における昇華熱が 711.20 kJ mol−1 であるから、化学エネルギーによる質量欠損は1モル当り 7.9132×10−9 g に過ぎない。
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