米戦艦との比較
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/03 05:39 UTC 版)
当時の米戦艦の砲塔では防炎対策が徹底されていたのに比して、日本戦艦では僅かに長門型の火薬庫の供給通路に撒水装置が設置されていたのみであり、後述のように舷側甲鈑も厚い米戦艦と比べた場合扶桑型の防御は見劣りする物となっていた。また、扶桑型建造後の1920年(大正9年)の各国海軍大口径砲弾道性能比較では米国のニューメキシコ級より採用された14in50口径砲の貫徹力は下記の通りとなっており、口径長が増したため日本の14in45口径より貫徹力が勝るものであった。 距離25,000m 165mm 距離20,000m 210.8mm 距離15,000m 335mm 扶桑と同時代に建造されたニューヨーク級、ペンシルベニア級、ネバダ級に搭載された14in45口径砲については大撃角、斜撃に対して強いという点以外は日本側と貫徹力に大差はないと考えられるが、ニューヨーク級の舷側水線甲鈑最厚部が扶桑型と同じく305mmとなっていたのに対してペンシルベニア級、ネバダ級では甲鈑が356mmとなり扶桑型を上回る防御を備えていた。また、当時の米戦艦の砲戦能力は1917年(大正6年)春の戦闘射撃成績では以下の物となっており、日本側と比べて劣るものでは無かった。 ニューヨーク - 距離19,505m-17,900m発射間隔50秒、散布界828m ペンシルベニア - 距離16,5400m-13,000m発射間隔1分02秒、散布界1,188m ネバダ - 距離16,900m-14,000mで発射間隔1分9秒、散布界752m 米戦艦と砲撃戦となった場合米戦艦よりも甲鈑の薄い扶桑型は距離20,000mから水線上部の舷側を貫徹され始め、距離15,000mからは舷側最厚部が貫徹されるのに対して、扶桑型では同距離でも米戦艦の舷側水線部を貫徹する事が出来ないため劣勢は免れず、ニューヨーク級以外との砲戦に於いては不利であった。また、扶桑型に対しては後述の改装によって水平防御、水中防御を中心に強化が施される事となったが、九一式徹甲弾採用後の1936年(昭和11年)11月に行われた「対米作戦用兵に関する研究」の中では、改装後のコロラド級、ペンシルベニア級、カリフォルニアを引き合いに出し、米戦艦は散布界が依然として減少しておらず射撃指揮所の高さから米戦艦が25,000mから観測可能となるのに対して日本側は30,000mから観測可能の為、射程に於いて4,000m〜5,000m優越しているとされる一方で、最大射程距離に於いては日米双方共に水平甲鈑を貫徹される事となり、16インチ砲の場合は距離25,000m以下より米戦艦の舷側甲鈑を貫徹可能であり、14インチ砲では19,000以下の場合に舷側甲鈑を貫徹可能であるとされ、水平甲鈑に関しては同距離では貫徹不可能とされていたのに対して、日本側は長門型が距離19,000mから舷側甲鈑を貫徹される事になり、扶桑型の場合では25,000mから舷側を貫徹されるとしていた。この防御力の薄弱さを補うために駆逐艦によって煙幕を展張し、敵弾を極力斜めに受ける事で跳弾させ貫徹を防ぎながら、決戦距離以下に急速接近するといった作戦が研究されている事から、改装後も扶桑型の防御は決して十分なものでは無かったと言える。
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