立山トンネル電気バスとは? わかりやすく解説

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立山トンネル電気バス

(立山黒部貫光無軌条電車線 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/26 13:08 UTC 版)

立山トンネル電気バス
基本情報
日本
所在地 富山県
種類 電気バス
開業 2025年4月15日(トロリーバスより転換)
所有者 立山黒部貫光
運営者 立山黒部貫光
詳細情報
総延長距離 3.7 km
駅数 2駅
保有車両数 8
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立山トンネル電気バス(たてやまトンネルでんきバス)は、富山県中新川郡立山町芦峅寺室堂ターミナル(室堂駅とも)から大観峰駅までの3.7キロメートルを結ぶ[1]立山黒部貫光バス路線である。全区間が立山直下の立山トンネル内を通る。立山黒部アルペンルートの一部を構成し、室堂ターミナルで立山高原バスと、大観峰駅で立山ロ一プウェイと連絡している[2]

2024年まではトロリーバス立山黒部貫光無軌条電車線(立山トンネルトロリーバス)」として運行され、立山黒部アルペンルート長野県側と結んでいた関電トンネルトロリーバス2018年の運行を最後に電気バスに転換して以降は日本国内唯一のトロリーバス路線であったが、修理用の部品調達が難しくなり、2024年11月30日限りで廃止された。同線は2025年時点で、日本国内で運行された最後のトロリーバスである。

概要

1971年の開業当初はディーゼルバスにより運行されていたが[3]、観光客の増加による増便に伴ってトンネル内に排気ガスが滞留するようになり、換気装置を設置しても大した効果が見られなかったため、環境保護のため1996年にトロリーバスへ転換した[4][3][5]

2018年12月に同じく立山黒部アルペンルートを構成する交通機関である関電トンネルトロリーバス(扇沢駅 - 黒部ダム駅)が鉄道事業を廃止し、2019年4月に関電トンネル電気バスとして電気バスへ転換されたことにより[6]、日本で唯一のトロリーバス路線となった[7]

2023年5月31日、立山黒部貫光は2025年を目途に立山トンネルトロリーバスを電気バスへ転換することを表明した[8]。トロリーバス導入から30年近く経過し、保守部品の調達が年々難しくなっているうえ、トロリーバスには鉄道車両に設置が義務付けられるデッドマン装置の搭載が難しい[9]ことも重なり、電気バスへの転換を決断した。11月30日には立山黒部貫光が国土交通省北陸信越運輸局へ立山トンネルの無軌条電車(トロリーバス)事業を2024年12月1日に廃止する旨を届出[10]。運行形態転換により日本におけるトロリーバスは全廃されることになった[11][12]。予定通り2024年11月30日、15時室堂発の大観峰行き(4両)をもって営業運行を終了した[13]

立山黒部貫光は、トロリーバスの廃止届提出を2023年12月に公表した際に電気バスへの転換時期を2025年4月と発表し[10]、2025年4月15日に予定通り電気バスが運行を開始した[14]

歴史

ディ一ゼルバスとトロリーバス時代の歴史も含める。

  • 1965年昭和40年)
  • 1969年(昭和44年)12月15日:立山トンネル貫通[17]
  • 1971年(昭和46年)
  • 1993年平成5年)2月8日:室堂 - 大観峰間の鉄道事業(無軌条電車)免許取得[20]
  • 1996年(平成8年)
    • 4月23日:トロリーバス運行開始[19][5]。ディーゼルバスからの転換とはいえ観光用トロリーバスとしては日本で2路線目で[5]、トロリーバスの新規路線開設は(関電トンネルトロリーバスの1964年)以来、32年ぶり。室堂駅・雷殿駅・大観峰駅が鉄道駅として開業。
    • 8月20日運輸省が鉄道室堂・大観峰間につき鉄道財団拡張を登録[21]
  • 1998年(平成10年)8月10日:雷殿駅に繋がる登山道が崩壊したため[7]、雷殿駅を休止。
  • 2013年(平成25年):雷殿駅を廃止[7][22]
  • 2022年(令和4年)12月16日:運賃改定実施を発表[23](2022年のシーズンは終了しているため、2023年のシーズンから適用)。立山トンネルトロリーバスは片道運賃は2200円に据置き、往復運賃は往復割引率を25 %引きから10 %引きに改定し3960円とする。
  • 2023年(令和5年)
    • 5月31日:2025年以降に、トロリーバスを電気バスに置き換えることを発表[8]
    • 11月30日:北陸信越運輪局に鉄道事業(無軌条電車)廃止を届出。
  • 2024年(令和6年)
    • 11月30日:トロリーバス最終運行日。
    • 12月1日:鉄道事業(トロリーバス)を廃止[10]。これにより室堂駅・大観峰駅は鉄道駅ではなくなる。
  • 2025年(令和7年)4月15日:トロリーバスの後継として電気バスによる運行を開始[14]

車両

電気バス転換時の導入車両は全部で8台で、全長10.5メートルの低床車両である[24]。車体には1台ごとに異なるラッピングが施され、うち5台は立山周辺の景観、3台は富山県上市町出身の細田守が監督を務めたアニメ映画『おおかみこどもの雨と雪』のイラストが描かれている[24][25]

電気バスの運行最高時速は45キロメートルである[24]

トロリーバス時代の要目

立山黒部貫光無軌条電車線
立山トンネルトロリーバスの車両
基本情報
通称 立山トンネルトロリーバス
日本
所在地 富山県
種類 無軌条電車[10]
起点 室堂駅
終点 大観峰駅
駅数 2駅
開業 1971年4月25日 (1971-04-25)[19]
(専用道経由の路線バスとして)
無軌条電車化 1996年4月23日[4]
無軌条電車廃止 2024年12月1日
電気バス化 2025年4月15日
所有者 立山黒部貫光
運営者 立山黒部貫光
使用車両車両」の節を参照
路線諸元
路線距離 3.7 km[1]
電化方式 直流600 V 架空電車線方式
高低差 134 m (440 ft)
最高速度 40 km/h[26]
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路線データ

  • 路線距離(営業キロ):3.7 km[5][7][1]
  • 駅数:2駅(起終点駅含む、中間点に信号場あり)[7]
  • 複線区間:全線単線[1]
  • 電化方式:直流600 V
  • 閉塞方式:自動信号式(到着台数をチェックして区間開通を確認)
    • 続行運転が行われ、また鉄道線のように軌道回路を設けることができないので、出発時には一定時間進行信号を現示してその間に出発させ、台数をカウントする。
  • 最高速度:40 km/h[26]
立山トンネル中央にある交換所。鉄道用の信号機がある。

運行形態

停車場・施設・接続路線
立山ロープウェイ
3.7 大観峰駅
雷殿駅出入口通路
3.1 雷殿駅 -2013
0.0 室堂駅
立山高原バス美女平方面)

室堂 - 大観峰間の所要時間は10分[5][12]。概ね30分間隔で運行(正午時間帯は60分ない)。冬期は運休する。

車両(トロリーバス)

駅一覧

駅の標高は、室堂駅が2450メートル、大観峰駅が2316メートル[12]。室堂駅は立山黒部アルペンルートの最高地点[12]であり、日本の鉄道駅としては最も高所であった[2]

駅名 営業キロ 接続路線
室堂駅 0.0 立山黒部貫光立山高原バス
大観峰駅 3.7 立山黒部貫光:立山ロープウェイ

脚注

  1. ^ a b c d 国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』平成28年度版、電気車研究会・鉄道図書刊行会、p.213
  2. ^ a b 駅・ターミナル案内:室堂(むろどう) 立山黒部アルペンルート公式サイト
  3. ^ a b アルペンルート関電トンネルのトロリーバス廃止…2019年から電気バスに”. レスポンス. イード (2017年8月28日). 2021年4月29日閲覧。
  4. ^ a b 梅原 2019, p. 62.
  5. ^ a b c d e 川島 2010, p. 91.
  6. ^ 関電トンネルにおけるトロリーバスの電気バスへの変更について』(プレスリリース)関西電力、2017年8月28日https://www.kepco.co.jp/corporate/pr/2017/0828_2j.html2021年4月29日閲覧 
  7. ^ a b c d e 梅原 2019, p. 63.
  8. ^ a b 立山黒部貫光、トロリーバス廃止検討 25年度以降、電気バスに”. 北日本新聞webunプラス (2023年6月1日). 2023年8月30日閲覧。
  9. ^ トロバス消滅の危機 立山黒部貫光、EV化方針」『北国新聞』2023年6月13日
  10. ^ a b c d 立山トンネルにおける無軌条電車(トロリーバス)事業廃止の届出及び電気バスへの変更計画について 立山黒部貫光(2023年12月11日)2023年12月12日閲覧
  11. ^ 国内唯一のトロリーバス消滅へ 立山黒部貫光、EV転換日本経済新聞ニュースサイト(2023年5月31日)2023年12月12日閲覧
  12. ^ a b c d トロリーバス 来年12月廃止へ/立山黒部アルペンルート」『朝日新聞』朝刊2023年12月12日(社会・総合面)同日閲覧
  13. ^ “さよなら国内唯一のトロリーバス 立山黒部アルペンルート運行29年”. 北日本新聞. (2024年12月1日). https://webun.jp/articles/-/716663 2024年12月1日閲覧。 
  14. ^ a b 立山黒部アルペンルート全線開通 EVバスを初導入」『日本経済新聞』2025年4月15日。2025年4月15日閲覧。
  15. ^ 1965年(昭和40年)7月16日運輸省告示第242号「専用自動車道の工事施工を認可した件」
  16. ^ a b c 地鉄 1979, p. 181.
  17. ^ 『愛蔵版 石川富山 昭和あのとき ストーリー編』(2014年8月5日、北國新聞社、富山新聞社発行)471頁。
  18. ^ a b 『立山黒部貫光30年史』(1995年10月30日、立山黒部貫光発行)140頁
  19. ^ a b c 曽根悟(監修) 著、朝日新聞出版分冊百科編集部 編『週刊 歴史でめぐる鉄道全路線 公営鉄道・私鉄』 30号 モノレール・新交通システム・鋼索鉄道、朝日新聞出版〈週刊朝日百科〉、2011年10月16日、18頁。 
  20. ^ 国土交通省鉄道局監修『鉄道要覧』平成28年度版、電気車研究会・鉄道図書刊行会、p.213
  21. ^ 官報』第1966号12ページ「鉄道財団拡張の公告」 - 運輸省、1996年(平成8年)8月28日
  22. ^ 立山黒部アルペンルート 2014安全報告書 (PDF) 』p.5
  23. ^ アルペンルート運賃値上げ 立山黒部貫光 エネルギー価格高騰”. 富山新聞 (2022年12月10日). 2023年8月30日閲覧。
  24. ^ a b c 立山黒部アルペンルートに電気バス 低床車両8台」『北日本新聞』2025年4月8日。2025年4月26日閲覧。
  25. ^ ラッピングデザインはこちら (PDF) - 立山黒部アルペンルート(2025年4月26日閲覧)
  26. ^ a b 寺田裕一『改訂新版 データブック日本の私鉄』(ネコ・パブリッシング[要ページ番号]

参考文献

  • 『写真でつづる富山地方鉄道50年の歩み』富山地方鉄道、1979年7月17日。 
  • 川島令三『【図説】日本の鉄道中部ライン全線・全駅・全配線 第7巻 富山・糸魚川・黒部エリア』講談社、2010年10月20日。ISBN 978-4-06-270067-2 
  • 梅原淳『ワクワク!!ローカル鉄道路線 北陸・信越・中部編』ゆまに書房、2019年1月15日。ISBN 978-4-8433-5332-5 

関連項目

外部リンク




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