積分値
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/11/03 17:45 UTC 版)
原理的にはNMRのピーク面積(積分値)は試料中に存在するそのピークを与える被測定原子数に比例する。NMR信号の強度は遷移を起こす準位間の占有数差に比例し、占有数差はボルツマン分布にしたがって準位間のエネルギー差の指数関数となっている。しかし化学シフトの異なる被測定核のエネルギー準位の違いは、観測に使われるエネルギー準位間隔に比べて著しく小さいため、占有数差はどの核もほとんど同じと見なすことができる。したがって基準試料等を用いずとも、それぞれのピークに対応する試料中の被測定原子同士のモル比が求められる。この特性は、分子構造の推定や混合物の組成分析に有用である。ただしFT-NMRでパルス繰り返し時間が緩和時間に比べて短い条件で測定したりするとピーク強度の飽和により積分値が少なく観測されるために、上記のような定量性は失われる。FT-NMR普及以前のH-NMRはほとんど低速掃引CW法測定だったので定量性が成り立っていたが、FT-NMRで複数回積算する場合は1H-NMRと言えども緩和時間に注意する必要がある。
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