稿本・写本・出版編本
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/02 21:47 UTC 版)
「ブリトン人の歴史」の記事における「稿本・写本・出版編本」の解説
現存する最古写本は大英図書館所蔵ハーレー写本(Harley 3859)で、かつては11世紀のものとされてきたが、近著では 1100年頃となっている。この写本は「ネンニウスの序文」を欠き、著者の名には一切触れられていない。従来、もっとも内容が原書に近い写本とされており、Stevenson 編本、 Mommsen 校訂本、Morrison 編新版の底本にされている。 『伝ネンニウス作の稿本』(Nennian recension)の代表例は、ケンブリッジ公立図書館Ff. I.27写本で、これはPetrie編本で底本に使われる。 ヴァチカン本(Vatican 1964 写本)は、Gunn編抄訳本に使用されるが、その作者は隠者マルコ(anachoreta Marco)とされる。 Giles編訳本は、 Gunn編抄訳本を元にしているというが、Vatican 写本(Mommsen の略号だとM本)にない「ネンニウス弁明文」や「驚異」も掲載するので、いくつかの写本を複合した拡張本ともいえる。 シャルトル本(Chartres 98写本)は、他の写本群に比べて特異な内容をもち、推定9世紀 - 10世紀とハーレー本よりもずいぶんと古い一点だったが、第二次世界大戦で逸失した。シャルトル本では、作者は「ウリエンの息子」(filius Urbagen)となっている。 『伝ギルダス作の稿本』(Gildasian recensions)には、例えば大英図書館所蔵Cotton Caligula A. VIII写本などがある。だが、『ブリトン人の歴史』が、アーサー王と近い時代に生きたギルダスによる真正の執筆だとは、いまどき真面目に考えられてはおらず、じっさい、『ブリトン人の歴史』のラテン語の文体は、ギルダス流の文章よりもずいぶんと粗雑だといわれる。 この作品の校定学(英語版)的な研究者、デビット・ダンヴィル(英語版)(ダンヴィルのヴァチカン本 の編書がDumville 1985である)は、「ネンニウス序文」は後世の偽作であると断定し、これはネンニウスのような作者が単独で著したものではなく、次第に加筆がされるうちに、のちの作品の姿を形成していった「無名の作」だと提唱する。ダンヴィルの見解支持がいまや趨勢になっているが、異論も唱えられている。過去にネンニウス作者説を論じたものに、リーバーマン(Liebermann 1925)がある。
※この「稿本・写本・出版編本」の解説は、「ブリトン人の歴史」の解説の一部です。
「稿本・写本・出版編本」を含む「ブリトン人の歴史」の記事については、「ブリトン人の歴史」の概要を参照ください。
- 稿本・写本・出版編本のページへのリンク