研究、教育について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 23:50 UTC 版)
簿記学と会計学の関係における沼田の考え方は、「簿記学と会計学の関係 ―両者の分境と、それぞれの任務と機能―」に明確に記されている。以下にその要約を記す。 簿記学と会計学は元来が企業の計算と帳簿という同一の対象を扱う科学であるから、両者の内容は当然錯綜し、これを明確に区分することは困難に思われる。例えば公認会計士試験や税理士試験などの国家試験問題についてみても、とくに計算問題についてはそれが簿記論の問題であるか、会計学(財務諸表論)の問題であるかが、後からみてわからないものがかなりある。「会計学の最高の焦点は評価理論である。簿記学は会計学で示された評価額または評価の基礎を適用して金額を算出し、これを計算・記帳すること」と言っている。会計学の焦点が評価であり、簿記学は会計学の評価に従って金額を算出し、記帳する。このことは、会計学は常に簿記学の記帳と計算の妥当性と可能性とを理解した上でその理論を確立する必要がある。そうでなければ会計理論は、たとえそれ自身は立派な正しい理論であっても、実行不可能に陥らざるを得ない。簿記学も会計学もともに実学であり、実効性の欠如した理論は全く価値がない。今日の企業会計原則を初めとする会計理論は以上の点においても再評価されるべきである。なお会計学の理論の樹立について、簿記学を十分に認識することは、会計学の正しい理論の樹立に役立つものであり、従って簿記学は会計学の前提学課である。同論文はいくつかの具体例をあげて、会計学の樹立に簿記学の省察がいかに重要か、また簿記学を省察することが、会計学の正しい理論の樹立にいかに役立つかを指摘している。 教育について沼田は簿記を学ぶこととしての重要性を「簿記を学ぶことの意味」に次のように残している。以下にその考え方を抜粋紹介する。 簿記を学ぶことについて二つの見方をあげている。一つは簿記を学びその理論を修得し、技術を身につけることは人生にとってどのように役立つか、いま一つは簿記を学ぶにはどのような手段があり、そのときどのような態度、自覚をもてばよいのかである。簿記を学ぶ人は企業で会計を担当するビジネスマンまた職業会計士として国家試験を目指す人であろう。その何れにしても簿記の理論と技術は必要不可欠であると同時に一般社会人にとっても就職という壁を乗越える大きな力になり得るということである。大企業においては無論、個人の起業においても簿記は必要である。次に簿記を学ぶ手段については初歩的、原則的な学習と技術は決してなおざりにすべきでないとしている。例えば貸借仕訳の原則を熟知しないと、その適用で誤りを犯す。このことは、いかなる取引でも正確に仕訳しうるように熟慮すべきで、簿記の基本は仕訳である。そしてそのうえで、「簿記学習には記帳練習が生命」としている。
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