短周期と長周期
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/28 20:04 UTC 版)
まず最初に水素(原子番号 1)では1s軌道に1つだけ電子が入る。次にヘリウム(原子番号 2)では1s軌道に2つの電子が入る。するとここでK殻が閉殻となる。閉殻した原子は価電子が存在しないため、結合を作ったり反応したりする能力に乏しく安定である。この性質を持つのが希ガス元素である。 次にリチウムでは2s軌道に1つ電子が入る。リチウムは1価の陽イオンになりやすいなど、1s軌道に電子が1つだけ入っている水素と類似した性質を示す。次にベリリウムでは2s軌道に2つ電子が入る。ただしベリリウムではL殻が閉殻ではない、すなわち価電子を2つ持つため、ヘリウムとはかなり性質が異なっている。続いてホウ素からネオンまでは2p軌道に1つずつ、電子が入っていく。ネオンまでいくとL殻は閉殻となる。このリチウムからネオンまでの8個の元素によって作られる1つの周期は短周期と呼ばれる。 次にナトリウムからアルゴンまでは同じように3s軌道と3p軌道に電子が入っていくことになる。そしてこれらの元素は、リチウムからネオンまでの元素の中で同じような価電子を持つ元素と類似した性質を持つことになる。例えばケイ素は価電子として3s軌道に2つ、3p軌道に2つの電子を持ち、これは2s軌道に2つ、2p軌道に2つの価電子を持つ炭素と相似であり、元素の性質も類似する。こうして元素の族ができ、周期が再現される。 カリウムとカルシウムは4s軌道の電子が価電子となるため、前の周期のナトリウムとマグネシウムに対応する。しかし、スカンジウムでは3d軌道に電子が入る。価電子の数としては3つであり、これはアルミニウムと対応し、性質の類似する部分もある(例えば酸化数として+III価をとるなど)。だがアルミニウムの価電子はp軌道のものであるので、価電子の配置としては相似ではなく、性質の異なる部分も多い。このため以前はスカンジウムとアルミニウムは同じ3族とし、その中でアルミニウムは3A亜族、スカンジウムは3B亜族とする扱いがなされていた。しかし、現在では別の族として扱うことになっている(スカンジウムは3族、アルミニウムは13族)。 亜鉛までは3d軌道が占有されていく。ガリウムになると次に4p軌道が占有される。ガリウムでは価電子は4s軌道の電子2つ、3d軌道の電子10個、4p軌道の電子1つということになるが、3d軌道の電子は完全に占有されてしまうとエネルギーが低下し価電子としての働きが弱くなる性質がある。そのためガリウムの価電子の配置は実質的にアルミニウムと相似と考えて良く、同じ族に入ることになる。そして順に4p軌道が占有されていき、クリプトンで再び閉殻となる。カリウムからクリプトンまでの18個の元素によって作られる1つの周期は長周期と呼ばれる。 ルビジウムからキセノンまでは前の周期と同じように5s軌道、4d軌道、5p軌道に電子が入っていき、同じような周期が再現される。 次の周期では4f軌道が占有されていく部分がある。この部分はランタノイド元素として区別されている。f軌道の性質もd軌道と類似しており、完全に占有されてしまうと価電子としての働きが弱くなる。そのため、4f軌道が占有されると次の5d軌道が占有されていくの部分の元素は前の周期の4d軌道が占有されていく部分の元素と類似する性質を示す。
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