異性体シフトとは? わかりやすく解説

メスバウアー効果

(異性体シフト から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/21 04:06 UTC 版)

57Fe のメスバウアースペクトル。

メスバウアー効果(メスバウアーこうか、: Mössbauer effect)とは、1958年にルドルフ・メスバウアーによって発見された結晶体状のガンマ線放射線源とその吸収体の間に発生する共鳴吸収現象を言う[1]

メスバウアー効果により、光のドップラー効果を極めて高い精度で検出することができるようになった。また、分光法の一つの手法であるメスバウアー分光法(Mössbauer spectroscopy)の原理でもある。

概要

原子核がガンマ線を放射し、もう一方の同じ原子核がそのガンマ線を共鳴吸収する現象をメスバウアー効果(Mössbauer effect)と呼ぶが、ガンマ線のエネルギーは一般に大きく、放射あるいは吸収過程で原子核が反跳するためにエネルギーが変化して周波数がずれるために共鳴は極めて起こり難く[2]、気体や液体状態中の原子核同士では共鳴は起こらない[3]

1958年に当時博士課程の学生であったルドルフ・メスバウアーは、ガンマ線の放射線源であるイリジウム191を結晶中に束縛させてさらに冷却することで(単一の原子核の質量を結晶格子に対する大きな有効質量に置き換えて)、原子核の反跳効果そのものを実質的に無くして、原子間の共鳴吸収現象を発生させることに成功した[4]

メスバウアーによるイリジウム191によるメスバウアー効果の発見後、他にも共鳴吸収現象を起こす原子核が発見された。今日では、メスバウアー効果を観測するのに最も都合のよい物質として鉄57(57Fe)が知られている[5]

メスバウアー効果は極めて鋭敏な(Q値の高い)共鳴効果であり、放射線源または吸収体のわずかな相対運動によって共鳴吸収現象が起こらなくなる。これは、光のドップラー効果を検出するにあたって非常に都合のよい性質であり、メスバウアー効果の発見以前には到底実験による検出は不可能と考えられていた現象(たとえば地球上の重力による赤方偏移)も検証ができるようになった。

理論

反跳によって失われるエネルギーERは、運動量保存則とエネルギー保存則より、

この項目は、物理学に関連した書きかけの項目です。この項目を加筆・訂正などしてくださる協力者を求めていますプロジェクト:物理学Portal:物理学)。


異性体シフト

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/18 22:15 UTC 版)

メスバウアー分光法」の記事における「異性体シフト」の解説

異性体シフト (δ)(アイソマーシフトとも。特に古い文献では化学シフトとも呼ばれる)は、軌道内の電子遷移による共鳴エネルギーシフトを表す相対的な尺度である(図2参照)。スペクトル全体s電子電荷密度により正または負の方向シフトする。この変化は、非ゼロ確率のs軌道電子とそれが回る非ゼロ体積の間の静電応答変化により生じる。 s軌道電子3次元球形占め体積組み込んでいるため、これのみが非ゼロ確率を示す。しかし、p, dや他の電子遮蔽効果通してs電子密度影響及ぼしうる。 異性体シフトは以下の式で表すことができる。Kは定数Re2 と Rg2の差は励起状態基底状態の間の実効核電半径差、[Ψs2(0)]aと[Ψs2(0)]bの間の差は上の電子密度の差(aは線源、bは試料)。ここにある化学異性体シフトは温度によって変化しないが、メスバウアースペクトルは二次ドップラー効果として知られる相対論的効果により温度感受性有する一般にこれによる影響小さくIUPAC規格ではこれを補正せずに異性体シフトを報告することが許可されている。 CS = K ( ⟨ R e 2 ⟩ − ⟨ R g 2 ⟩ ) ( [ Ψ s 2 ( 0 ) ] b − [ Ψ s 2 ( 0 ) ] a ) . {\displaystyle {\text{CS}}=K\left(\langle R_{e}^{2}\rangle -\langle R_{g}^{2}\rangle \right)\left([\Psi _{s}^{2}(0)]_{b}-[\Psi _{s}^{2}(0)]_{a}\right).} この式の物理的意味は例を用いて明確化することができる。 有効核電荷変化が負であることから(Re < Rgのため)、57Feスペクトルのs電子密度の増加により負のシフトが与えられるが、119Snのs電子密度の増加は(Re > Rgのために)全体的な核電荷の正の変化により正のシフト与えられる酸化第二鉄イオン (Fe3+) は、第二鉄イオンs電子密度d電子により弱い遮蔽効果より大きいため、第一鉄イオン (Fe2+) より異性体シフトが低い。 異性体シフトは電気陰性基の酸化状態原子価状態、電子遮蔽および電子吸引力決定するのに有用である。

※この「異性体シフト」の解説は、「メスバウアー分光法」の解説の一部です。
「異性体シフト」を含む「メスバウアー分光法」の記事については、「メスバウアー分光法」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「異性体シフト」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「異性体シフト」の関連用語

異性体シフトのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



異性体シフトのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのメスバウアー効果 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのメスバウアー分光法 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS