理化学研究所における検証実験
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「刺激惹起性多能性獲得細胞」の記事における「理化学研究所における検証実験」の解説
2014年4月以降、理化学研究所はSTAP現象の検証チームを立ち上げた。チームは相沢慎一・丹羽仁史を中心として小保方は除外した形で構成され、翌年3月を期限として論文に報じられていたプロトコルでのSTAP現象の再現を試みた。また、7月からはこれとは別に小保方にも11月末を期限とした単独での検証実験を実施させた。同年8月27日の中間発表の段階では、論文に記載されているプロトコルでのSTAP細胞の出現を確認することはできなかった。同年12月19日、理化学研究所は、検証チーム・小保方のいずれもSTAP現象を再現できなかったとし、以下の検証結果を発表し、実験打ち切りを発表した。 検証実験に用いたマウスの遺伝子系統、リンパ球を採取する部位、弱酸性溶液の種類 検証実験では、生後5〜10日目の、Oct-GFPを導入した2種類の遺伝系統のマウス:C57BL/6〔以下、B6〕とF1(C57BL/6×129)〔以下、F1〕の、脾臓・肝臓・心臓の3部位から採取したリンパ球を用い(小保方実験では脾臓)、HClとATPの2種類の弱酸性溶液で処理する、の組み合わせでSTAP現象の再現を試みた。また、対照実験として弱酸性処理なしの試料でも実験した。 STAP細胞様細胞塊の出現数の検証 HCl処理、ATP処理いずれも多くの細胞塊でGFP遺伝子発現による緑色蛍光が確認されたが(以下、STAP細胞様細胞塊)、個々の細胞レベルでは10/106播種細胞ほどしか光っておらず(小保方実験)、撤回論文報告の数百/106とは異なっていた。 また、STAP細胞様細胞塊の出現率がマウス系統の違いにより異なるかを検証したが、出現率は、B6で78%(8/28)、F1で44%(4/9)と、有意な差ではなかった(小保方実験)。 別途、フローサイトメーターでも解析したが、19回の酸処理のうち17回はCD45-GFP+の有意な遺伝子発現が認められなかった(小保方実験)。 多能性細胞特異的分子マーカーによる検証 緑色蛍光および赤色蛍光の分離検出、DAPI、E-カドヘリン、Oct3/Oct4の多能性細胞特異的分子マーカーの遺伝子発現の確認を行った。 しかし、小保方実験、検証チーム実験とも成果は乏しく、理化学研究所として「細胞塊が有する緑色蛍光を自家蛍光と区別することも困難で、その由来を判定することは出来なかった。」と帰結する結果だった。 キメラ形成能の検証 キメラ形成能の確認(マウス実験)については、小保方実験、検証チーム実験共に、検証チームの同じ研究員が実験を担当した。 小保方実験では、48回の独立の実験で得られた1,615の移植細胞塊のうち、845の着床後胚を得たが、リプログラミングを有意に示す(GFP陽性細胞を含む)キメラを形成した胚は0だった。 検証チーム実験では、8回の独立の実験で得られた244の移植細胞塊のうち、117の着床後胚を得たが、リプログラミングを有意に示すキメラを形成した胚は0だった。 幹細胞株の樹立 検証チーム実験では、14回の独立の実験で得られた492のSTAP細胞様細胞塊のLIF/ACTH含有培地での培養を試み、3が増殖したが、継代培養に成功したものは0だった。 FI幹細胞を再現できるかについては、検証チームのみが8回試みたが、得られた細胞株は0だった。
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