狭義の「ゴミムシ」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/18 06:50 UTC 版)
狭義のゴミムシ Anisodactylus signatus (Panzer, 1797) は、オサムシ科ゴモクムシ亜科に分類される甲虫の一種。 体長13mm前後の中型のゴミムシ類の1種である。全身は黒色で前胸や頭部の幅は広く、がっしりした印象を与える。頭部背面をよく見ると、多少見えにくいものの1対の暗赤色の斑紋がある。これは色素で色づいているというよりも、その部分だけメラニン色素が抜けて色が薄くなっているために赤く見えるとしたほうが適切である。オサムシ科の頭部には外見構造的に単眼はないが、この斑紋が単眼と同様の働きを持つ内部の光受容器官に光を届ける窓になっているのではないかと、予想する向きもある。 北海道から九州にかけての日本列島のみならず、朝鮮半島、極東ロシアから中国、シベリアを経てヨーロッパに至る、ユーラシア大陸北部に広く分布する。 生息環境は平地から山地までと広く、落ち葉やごみ、石の下などに潜む。成虫は小昆虫を捕食するのみならず、他のゴモクムシ亜科の昆虫同様イネ科雑草などの種子をよく摂食する。成虫で越冬した後、産卵は4月中旬から行われ、幼虫はゴモクムシ亜科のゴミムシ類に時々見られるようなイネ科などの種子の専食ではなく、飼育実験ではガの蛹のような動物質の食物の捕食だけで成虫にまで成長することが報告されている。但し、ごく近縁で形態も酷似したホシボシゴミムシでは同様の研究結果が報告されているのと同時に、幼虫の正常な発育、雌雄ともの性成熟には種子食が必須で、動物質の摂取は雌雄の成虫の繁殖(産卵数と射精物生産)には正の影響を与えるものの、幼虫に動物質を与えて育てるとナズナやハコベの種子のみを与えて育てた場合と比べて羽化率が低下するなど負の影響を与えることが報告されている。終齢である3齢幼虫は体長約11.5-18.0mmで、頭部は赤褐色、前胸背板も赤褐色だが中胸、後胸背板は赤みが弱くなって暗色となり、腹節背板は暗色を帯びた黄褐色。 同属で同じような生息場所に普通にみられるホシボシゴミムシ A. punctatipennis Morawitz, 1862 やオオホシボシゴミムシ A. sadoensis Schauberger, 1931 と酷似し、同定のためには前胸背板後角の突出部の微妙な形態の違いなど微細な差異を顕微鏡などで観察し、判断しなければならない。この2種ともゴミムシよりは分布が狭く、前者は東アジアに、後者は日本列島に限られる。
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