狭義のVNC状態
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/09/11 06:55 UTC 版)
「VNC (微生物学)」の記事における「狭義のVNC状態」の解説
自然界では、前述のように培養可能な微生物と培養不能な微生物が混じった状態で存在している。培養不能なものは培養不能であるが故に厳密に同定することはできないが、その中には培養方法が確立されていないもの(培養不能菌)以外にも、すでに培養方法が確立されているはずの菌種が混じっていることが判明している。これらの菌は、本来ならば増殖が可能であるはずの培地や培養条件にそのまま接種しても分裂・増殖しないが、栄養状態によっては細胞が大きく成長したり、リボソームや酵素などが正常に機能すること、核酸などの存在から、死んではいないことが証明されており、この状態が狭義にVNCと呼ばれる。この状態は、コレラ菌や大腸菌、赤痢菌などで見つかっているが、それ以外のほとんどの菌についても同様な状態になりうると考えられている。 VNC状態が、どのような意味を持つかについては以下の二つの仮説がある。 生育環境の悪化によって細菌がダメージを受けて死にかけ、増殖できなくなっている状態である。 生育環境の悪化に対して細菌が増殖を止めて休眠状態になったものであり、細菌の生存にとって何らかの有利な面を持つ。 このどちらの説が正しいかは明らかになっていないが、少なくとも、VNC状態にあっても適切な処理をすることによって再び培養可能な状態に戻る(VNC状態から蘇生する)ものがあることが報告されている。もっともよく知られた例はコレラ菌のVNC菌で、塩化アンモニウム存在下で熱ショック処理することによって、培養可能になる。 この狭義のVNC状態は、いくつかの点で芽胞と共通する側面を持つ。芽胞はバシラス属やクロストリジウム属の細菌が作る耐久構造で、VNC状態と同様に増殖不可能な休眠状態である。ただし芽胞の場合は、通常の細菌が生育可能な環境になれば発芽して増殖を開始する点と、極めて強い耐久性を持つ点でVNC状態とは異なる。
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