物質固有の強度
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/06 08:10 UTC 版)
水中で電離する化合物の酸性(塩基性)の強弱は、その物質の電離度によっておおまかに分類される。電離度は電解質が溶液中で解離(電離)しているモル比をあらわす値で、電離度がほぼ 1 である酸(塩基)を強酸(強塩基)、電離度が小さいものを弱酸(弱塩基)と呼ぶ。また、純硫酸よりも強い酸性媒体を超酸ということがある。 より定量的に酸(塩基)の強さを示す場合は、解離平衡を考え、その平衡定数 Ka の対数に負号をつけた酸解離定数 pKa で表すことが多い。塩基に対しては、共役酸の pKa か、特に水中の場合では塩基解離定数 pKb = 14 − pKa が用いられる。 例えば、酢酸の pKa は 4.76 、ギ酸の pKa は 3.77 である。pKa は定義から数値が小さいほど水素イオンを解離しやすい、すなわち強い酸であることを示す。したがって、同じ弱酸でもギ酸のほうが酢酸より 10 倍強いことが分かる。 また、この表記法を用いると、有機物など通常電離するとは考えない化合物に対しても酸・塩基の強度すなわちプロトン解離の指標として用いることができる。例えば、水中でのメタンの pKa は 48、ベンゼンは 43 であり、ベンゼンの水素の方がはるかに酸性が強い(すなわち、プロトンとして引き抜かれやすい)ことが分かる。 塩基の強さは共役酸の pKa から判断することができる。例えば、プロトン化されたアンモニア(アンモニウム)のpKa は 9.2、トリエチルアミンは 10.75 である。すなわち、トリエチルアミンに配位したプロトンはアンモニアの場合に比べて 1 桁ほど解離しにくい。このことは、トリエチルアミンがアンモニアに比べて 10 倍強い塩基であることを示している。 酸解離定数を指標として用いることで、クライゼン縮合など、水素引き抜きが関与する反応に必要な塩基を推量することができる。
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