父オーギュスト・ワルラスの影響
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「レオン・ワルラス」の記事における「父オーギュスト・ワルラスの影響」の解説
父のオーギュスト・ワルラスは、元は法学者であったが、当時の価値論に不満を持ち、経済学研究を始めた。オーギュスト・ワルラスは、中学校の校長、その後視学官を務めており、職業的な経済学者ではなかった。しかし、レオン・ワルラスの自伝によれば、その経済思想は、息子に着想を与えるという点では、特に土地国有化論と共に、価値論について大きな影響を及ぼした。もっとも、人間の欲求の絶対量に対する財の稀少性に基づいて価値を規定するオーギュスト・ワルラスの概念は、レオン・ワルラスの稀少性概念とは相当に異なるので、息子は父の言葉だけを受け継ぎ、その概念は独自のものであると言える。 また、ワルラスは、社会改革の理想も父から受け継いだ。レオン・ワルラスは、土地の国有化をオーギュストから受け継いで提唱した。その要点は次の通りである。社会が進歩するにつれて、資本蓄積が進行し、人口は増加していく。しかし、土地の存在量は事実上固定されているので、社会発展と共に地価は常に上昇していく。そして、私有財産制の下では、その収益は土地の所有者である地主に帰する。しかし、それは地主の活動によるものではなく、いわば社会の発展の成果を地主が独占することを意味する。一方、労働の成果は労働をした個人に帰するべきものであるから、賃金・俸給に対する課税は、個人の権利を侵害することになる。それでも、個人を超えた別個の存在としての国家或いは社会は、その活動のための収入を必要とする。ワルラス父子は、土地は自然からすべての人間に与えられたものであるから、社会が必要とする経費は地代収入によって賄うべきであり、それによって国家は個人の権利を侵害する課税の必要がなくなると論じた。もっとも、私有財産である土地を無償で権力的に取り上げることはできないので、ある種の債券を対価として発行することで、土地を国有化することを提案している。しかし、それも現実には不可能であるという結論に至っている。
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