父の霊
★1.父の霊。
『アエネーイス』(ヴェルギリウス)第5巻 トロイア陥落後、アエネーアスは部下たちとともに海上を彷徨し、新国家をうち建てるべきイタリアの地に船を向ける。夜、亡父アンキーセスの霊がアエネーアスのもとに現れ、「イタリアの地に上陸したら、巫女シビュラを案内人として地下界に降り、わしに会いに来るがよい」と告げる→〔冥界行〕3。
『源氏物語』「明石」 3月上巳の日以来、須磨の浦には暴風雨が続き、光源氏のいる寝殿の廊にも落雷があった。13日の暁近く、光源氏の夢に亡父桐壺院が現れ、「住吉明神の導きのままに、はやくこの須磨の浦を去れ」と告げる。その日、明石入道が舟で迎えに来て、光源氏は明石へ移る。
『今昔物語集』巻10-24 漢代の人賈誼は、息子の薪が幼い頃に死んだ。薪が父賈誼の墓前で学問の成就を願うと、賈誼の霊が現れ、以後15年に渡って毎夜墓前で薪に学問を授けた。
*父の霊が「仇を討ってくれ」と、息子に請う→〔霊〕6bの『ハムレット』(シェイクスピア)第1幕。
★2.父祖の霊。
『大鏡』「師輔伝」 冷泉帝は、もののけにとりつかれており、「行幸などはどうなることか」と、人々が心配した。しかし大嘗会の御禊の折には、立派に行幸された。これは、母方の祖父にあたる九条殿師輔公の霊が、「人の目にあらはれて(人目に見えるくらいまざまざと現れて)」(*「人の目にあらはれで(人の目にはみえないが)」という解釈もある)、冷泉帝の後ろを抱いて御輿の中に付き添っていたのだった。
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