爵位継承について
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/22 22:50 UTC 版)
兄弟全員が継承できる大陸の爵位と違って、イギリスの爵位は常に一人だけが相続する。爵位は終身であり、原則として生前に譲ることはできない(例外として繰上勅書がある。これが出されると従属爵位の一つが法定推定相続人に生前移譲され、法定推定相続人も貴族院議員に列する)。爵位保有者が死去した時にはその爵位に定められた継承方法に従って爵位継承が行われる。したがって爵位保有者が自分で継承者を決めることはできないし、養子を取ったとしても爵位継承順位には影響を及ぼさない。 またかつて爵位継承を拒否することはできなかったが、貴族院が庶民院に対して劣後していく中で貴族に庶民院議員資格がないことが問題となり、1963年に貴族法が制定されて爵位継承から1年以内(未成年の貴族は成人後1年以内)であれば自分一代に限り爵位を放棄して平民になることが可能と定められた。 勅許状によって創設された爵位は大半が継承方法として「初代の直系の嫡出の男系男子」と定めており、この場合は娘や初代前に遡った分流は継承し得ない。ただ、爵位によってはそれと異なる継承方法の特別継承者(Special remainder)の規定が定められた爵位もあり、その場合はその継承方法に従う。したがって特別継承者の規定で継承が規定されている女子は爵位を継承しえる。また議会招集令状(英語版)によって創設された古いイングランド貴族男爵位は継承方法が定められていないため、当時のイングランド相続法に従って男子なき場合に女子が継承する。ただし、この場合は姉妹全員が共同相続人となるため(長女が次女に優越しない)、姉妹やその系統がある場合には爵位継承者を決められなくなり、その爵位は停止 (abeyance)となる。そのため議会招集令状による男爵位は多くが停止状態になったままになっている。スコットランド貴族(特にイングランドと同君連合になる前の爵位)は、男子なき場合に女子(長女優先)が継承できるのが通例である。 なお貴族が蒸発して生死不明になった場合は、裁判所の死亡宣告を得ることで爵位継承が認められる。近時の例では1974年に第7代ルーカン伯爵ジョン・ビンガムが、別居中の妻の家で子供たちの乳母サンドラ・リベットが殺害された後に失踪してリベット殺害の容疑がかかったが、その後ずっと行方不明になっている件について、息子のジョージ・ビンガム(英語版)がロンドン高等法院に父の死亡認定の申し立てを行い、2016年2月3日にロンドン高等法院から認められたことで第8代ルーカン伯爵位を継承している
※この「爵位継承について」の解説は、「世襲貴族」の解説の一部です。
「爵位継承について」を含む「世襲貴族」の記事については、「世襲貴族」の概要を参照ください。
- 爵位継承についてのページへのリンク