漏給と捕捉率
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 00:08 UTC 版)
所得が生活保護基準以下であるにもかかわらず、実際には受給していない(漏給)低所得層の多くは、「稼働能力を活用していても収入が最低生活費を下回る」などの生活保護の開始要件を満たしており、申請すれば生活保護が開始されるにもかかわらず、そうした知識を持たないため生活保護を申請するという発想がないという問題が指摘されている。 日本において、世帯所得が生活保護支給基準以下となるケースのうち、実際に支給を受けている割合(捕捉率)は、複数の研究によればいずれも約10 - 20%となっている。厚生労働省の推計は年全国消費実態調査、国民生活基礎調査という複数データを利用した試算となっているが、2007年時点国民生活基礎調査では資産を考慮せず試算した場合、生活保護支給基準以下の所得で受給していない世帯は597万世帯であるのに対して、実際に支給を受けている世帯は約108万世帯であり、保護世帯比は15.3%(108/705万世帯)となる。しかし資産を考慮した場合では、なお保護基準以下となる世帯は229万世帯となるため、実際に必要な世帯に対する保護比は32.1%(108/337万世帯)と推定している。 日本政府は、1964年度までは「低消費水準世帯調査」という貧困調査を行っていた。2009年には45年ぶりに相対的貧困率の公表という形で貧困調査を行った。 総合開発研究機構の2008年段階の試算レポートによると、就職氷河期の人々について、働き方の変化(非正規の増加と、家事・通学をしていない無業者の増加)によって生じる潜在的な生活保護受給者は77.4 万人、それが具体化した場合に必要な追加的な予算額累計約17.7 兆円〜19.3 兆円となる結果が導き出され、これが現実となれば社会的にも深刻な影響を与える規模であることが予想されている。実際には、この他にも医療扶助などさまざまな扶助が加算されるのが通常なので、毎年1兆円超の追加財政負担が必要となるものと想定される。しかも、このレポートの基となる試算は2006年のデータを用いて行われているが、この時期はリーマンショック以前であり、かつ経済成長率も2%近くあったことを勘案するとより結果は深刻であり、現在の生活保護費3.7兆円が今後も持続するものとすると、就職氷河期世代の生活保護制度への本格的な参入により、少なく見積もっても約5兆円にまで膨らむこととなるが、これは消費税率2%に相当する との指摘もある。
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