消費税率8%への引き上げ後の景気への影響に関する議論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/31 23:36 UTC 版)
「日本の消費税議論」の記事における「消費税率8%への引き上げ後の景気への影響に関する議論」の解説
日本銀行政策委員会審議委員である佐藤健裕は、2014年4月に消費税が増税されても一時的に消費は落ち込むが6月から9月にかけて景気は回復し始めると述べた。けれども消費税増税によって物価動向の観測は難しくなるとし、日銀は物価の動向を数カ月注視していくとしている。佐藤は、1997年に比べて2014年現在の日本経済は消費税増税に十分耐えられるほど堅固であり、消費税率を8%に上げても1997年の再来はないと主張し、増税で景気が落ち込んでも追加の金融緩和を講じる必要はないと示唆した。 ポール・クルーグマンは、デフレのために依然として実質金利が高止まりしており、日本経済がデフレを脱し健全な経済成長をするまでは消費税の増税をするべきではないとの見解を示している。もし脆弱な景気回復の中で消費増税を行えば、一時期の回復が自滅的な結果に終わってしまう可能性があることが懸念される。財政規律という名目で、回復傾向にある日本経済を不況に逆戻りさせることは愚かなことだとクルーグマンは論じる。 ローレンス・サマーズは、2013年における日本のデフレからの脱却路線が永続的かそれとも一時的なものかは不明瞭だと述べた。2014年4月の消費税増税は日本政府による緊縮財政であり、これの悪影響を打ち消すだけの消費拡大の策を打たない限りは、この増税は日本にとって大きなリスクになるとサマーズは説く。サマーズは2014年3月にアブダビで開かれた会合で、2014年4月の消費税増税による悪影響が予想以上のものになるのではないかとの懸念を示し、また、増税後の景気回復の見込みについても過大評価されているのではないかと述べた。 ジョセフ・E・スティグリッツは、5%から8%への消費税増税が1997年の再現になるのではないかと危惧する。日本経済は依然として脆弱であり、早すぎる増税によって経済成長が損なわれてしまうリスクがある。第2次安倍内閣は2.4%の法人税減税などトリクルダウン理論によって消費税増税の負のインパクトを緩和するつもりだが、仮にそれを米国や英国で行ったとしても高所得者のおこぼれが低所得者にしたたりおちることはなく、現実には大企業はそれを自分たちのボーナスとするだけであるとスティグリッツは述べる。 日本政府は増税と同時に5兆円規模の景気対策を行い増税の悪影響を緩和するつもりであるが、みんなの党の浅尾慶一郎は増税が日本経済にダメージを与えることがわかっているなら、何故わざわざ増税をするのかわからないと述べる。
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