流通規制措置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/14 15:20 UTC 版)
ロシア政府は、2008年の抗生物質検出を理由に、3社のカンガルー肉輸出業者からの輸入について禁止措置を発動した。さらに、翌2009年3月の大腸菌群などを理由に、18社のオーストラリアの食肉輸出業者(うち5社がカンガルー肉業者)に対して、同様の禁止措置を発動した。その結果、カンガルー肉価格は過去最高水準の1kgあたり1.3オーストラリア・ドルだったのが、70セントにまで暴落し、いくつかの工場が閉鎖に追い込まれている。食品安全は口実で、実際は政治的な理由による規制だとの反発もオーストラリアの食肉業者の間では起きている。 オーストラリアのクイーンズランド州政府は、対応措置として、カンガルー肉のトレーサビリティ確保のための個体識別タグを試験導入したと発表している。野生動物へのこの種の識別タグ利用は初めてという。 ロシアに続く形で、EUが、欧州議会でカンガルー肉の貿易規制法の制定を検討していると報じられている。EUでは、2008年には犬や猫の毛皮が貿易禁止となり、2010年にはアザラシ製品の貿易禁止法が施行されているが、これらに続く規制対象としてカンガルー肉が俎上に上がっている。衛生問題なども理由になっているが、動物愛護の観点からの市民運動が主たる動機になっているという。「44万頭のジョーイ(Joeys、赤ちゃんカンガルー)が殺されている」をキーフレーズに使い、イギリスなどの愛護活動家らを中心にしたキャンペーンが展開されている。このEUでの新たな規制の動きに、オーストラリア政府は懸念を表明している。 他方、オーストラリア政府は、ロシアに代わる新たな市場として中国への輸出を目論んでおり、2010年の上海国際博覧会を利用して普及を図ろうとしている。しかし、こうした中国への輸出を目指す動きに対しては、オーストラリア国内からも一部では批判の声が上がっている。スティーブ・アーウィンの父であるボブ・アーウィンらは、中国側に対し、「私たちはパンダを食べないから、カンガルーを食べないで」とカンガルー肉を輸入しないよう呼びかけを行っている。
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