法律上の駆け引き
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/07 04:31 UTC 版)
「エドワード8世の退位」の記事における「法律上の駆け引き」の解説
1936年10月27日のシンプソンの離婚審判の後、彼女の弁護士であるジョン・セオドア・ゴダード(英語版)は、「愛国的な」市民が、離婚を阻止するために法的手段をとるのではないか、そしてその種の介入が成功するのではないかと懸念を抱いた。裁判所は両当事者が合意の上で行う婚姻解消である協議離婚を認める事ができなかったため、アーネスト・シンプソンを被告とし、ウォリス・シンプソンを無実の被害者とする無過失離婚として申請されていた。妻が他者と結婚できるよう、夫の不倫の捏造や、見せかけの不倫の演出をシンプソン夫妻が共謀していた事が、市民の介入によって明らかになれば、離婚訴訟は失敗に終わる。1936年12月7日の月曜、国王は、ゴダードがウォリス・シンプソンに面会するため南フランスへ飛ぶ予定である事を耳にした。国王は彼を召喚し、訪問がシンプソンに疑念を抱かせる事を恐れて、彼の渡航を明確に禁じた。ゴダードは、ダウニング街に赴き、ボールドウィンに面会し、その結果カンヌ行きの飛行機が手配された。 到着後、ゴダードは依頼者に、市民の介入が行われた場合、成功する可能性が高いと警告した。ゴダードの弁によれば、彼女に離婚申請を取り下げるように助言する事が彼の義務だった。シンプソンは提案を拒否したが、二人は国王に電話を入れ、彼女は、国王が在位を続けるために、国王と別れる意思がある事を伝えた。しかし、それは遅すぎた。国王は、例えシンプソンと結婚できなくても、既に退位する事を決心していた。実際、退位は不可避という観測が強まる中、ゴダードは「依頼人は状況を緩和させるためなら何でもする用意があったが、相手(エドワード8世)は決意していた。」と述べている。 飛行機に乗るのが初めてだったゴダードは心臓が弱く、主治医のウィリアム・カークウッドに同行を依頼した。カークウッドは産婦人科が専門の研修医であったため、彼の存在によってシンプソンが妊娠しているという誤った憶測を招き、さらには中絶をしているという憶測まで飛び交った。マスコミは、弁護士が婦人科医と麻酔科医(実際には弁護士の事務員)を伴ってシンプソンのもとへ飛んだと興奮気味に報じた。
※この「法律上の駆け引き」の解説は、「エドワード8世の退位」の解説の一部です。
「法律上の駆け引き」を含む「エドワード8世の退位」の記事については、「エドワード8世の退位」の概要を参照ください。
- 法律上の駆け引きのページへのリンク