歴史と表現
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/10 19:10 UTC 版)
コンクリート(正確には「セメントコンクリート」。コンクリートには他にアスファルトコンクリート等が有る)の原料はセメント・砂(細骨材)・砂利(粗骨材)・水である。砂利が無いものは「モルタル」と呼ばれる。 セメント利用の歴史は古く、古代エジプトにまで遡る。コンクリートもその祖形は古代ローマに見られるが、現在のように建築構造材として用いられたのは18世紀末になってからである。それ以降、コンクリートは近代建築の発展に欠くことの出来ない新材料となり、鉄・ガラスと並んで近代建築の三要素とされている。 建築の仕上げ表現としてのコンクリート打放しの歴史は、フランスの建築家オーギュスト・ペレがル・ランシーの教会(1923年)で、その柱梁表現に用いたことに始まるが、その自由な可塑性から、ドイツ表現主義を初めとする曲面的表現において大いに活用され、「打放しコンクリート」もダイナミックな造形にふさわしい表現として歓迎された。我々が現在、コンクリート打放しと聞いてまず思い浮かべる壁体の表現として用いられたのは、日本におけるアントニン・レーモンドのレーモンド自邸(1924年)が世界で最も早く、コルビュジエが1932年にスイス学生会館で打放しを試みる8年前のことである。 その後、バウハウス、CIAMなどの活動により、建築形態は直線的なものが主流となり、「打放しコンクリート」の手法はあまり用いられなくなった。しかし第二次世界大戦後、強く荒々しい彫塑的コンクリート表現という解釈に立ったル・コルビュジエの作品や、美しい輝くような禁欲的なコンクリート表現という新解釈を打ち出したルイス・I・カーン等の作品によって、「打放しコンクリート」は再び建築表現の主役となる。コルビュジエの下で学んだ前川國男等の「打放しコンクリート」は前者の思想の延長線上にあり(例:東京文化会館、弘前市民会館等)、カーンに私淑した安藤忠雄等の現代の商業建築・住宅等のものは、後者の思想の延長線上にあると言える。
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