歴史、成分と有効性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 22:39 UTC 版)
大風子油(だいふうしゆ)は、イイギリ科Hydnocarpus属(APG植物分類体系ではアカリア科に移動)に属する何種類かの植物の種子である大風子 (Hydnocarpus anthelminticus ダイフウシ(ノキ)) の種皮を除いてから圧搾して得た脂肪油である。これは,常温では半固体状( semi-solid )で強い匂はない。ガスクロマトグラフィーを行うと次の物質を示す。不飽和環状脂肪酸,すなわちヒドノカルピン酸 (英語:hydnocarpic acid)、チャウルムーグリン酸(英語:chaulmoogric acid)、ゴーリック酸(英語:gorlic acid)と、少量のパルミチン酸などの混合物のグリセリンエステルである。 搾油直後には白色の軟膏様の性状を示し無味無臭であるが、次第に黄色に変化して特有のにおいと焼きつくような味を生じる。もともとは古代より東南アジアやインドの民間療法として行われていた治療法であった。中国には明の時代に伝わり1578年、本草綱目にハンセン病の治療薬として漢方の処方が記載されている。日本でも江戸時代頃から用いられた。19世紀末にはヨーロッパでも使用されるようになった。1920年代にオーストラリアの植物学者ヨゼフ・F・ロックにより再発見され、全世界で一般的に使用されるようになった。 1917年にはイギリスの医師・ロジャース卿によって大風子油からジノカルピン (Gynocarpin) 脂肪酸を製剤化し、内服薬・注射薬が作られた。その後、1920年にヒドロカルプス酸ナトリウム製剤(内服薬・注射薬)が作られた。これらは、「アレポール」(英語:alepol)と呼ばれイギリスの植民地であるインド・ビルマを中心に使われた。その後、種々の改良が行われた。アメリカ薬局方には、内服療法では消化器障害の副作用を生じるため注射薬として、収載された。 大風子油の注射の欠点は注射部位にしばしば化膿や結節や瘢痕を残すことがあった。効果が乏しく無効という意見も多かったが、大風子油で治療をしない時に比べれば有効であるとした報告があることと、他に有効な薬剤が存在しなかったため、大風子油による治療は多くの国で行われた。その後、1943年のグルコスルホンナトリウムが有効であるという報告以降は、大風子油による治療は急速に行われなくなった。
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