武力不行使原則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/12/18 14:25 UTC 版)
武力不行使原則(ぶりょくふこうしげんそく)、または武力行使禁止原則(ぶりょくこうしきんしげんそく)は、国際関係において武力の行使、武力による威嚇をすることを禁じた国際法上の原則である[3]。1945年の国連憲章2条4項に定められ、1986年のニカラグア事件国際司法裁判所判決では武力不行使原則が国連憲章上の原則であるにとどまらず慣習国際法としても確立していることが確認された[4]。慣習国際法としての確立により、現代における通説では武力不行使原則が国連憲章を批准していない国連非加盟国に対しても適用されると考えられている[4]。こうした現代の武力不行使原則は不戦条約などの戦前の戦争違法化の欠陥を克服した側面もあり[3]、人類の長年にわたる戦争禁止の努力を前進させたものと評価されるものである[5]。しかし一方で、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国といった国連安保理常任理事国が自ら武力不行使原則に違反する行動をとった場合に十分な対応ができないという不完全な側面もある[6]。
注釈
- ^ "force"という英単語には「武力」という意味の他に「影響力」という意味もある[19]。本文で述べたように、国連憲章の日本語公定訳文においては2条4項の"force"の文言が「武力」と訳出されているが、国連憲章の正文は中国語、フランス語、ロシア語、英語及びスペイン語であり日本語の正文は存在しない(国連憲章111条)。正文ではない言語に翻訳された訳文による解釈は国際的には通じない[20]。
出典
- ^ 結城(2019)、71頁。
- ^ 輿石(2011)、33-35頁。
- ^ a b c d e 山本(2003)、706-707頁。
- ^ a b c d e f g h 杉原(2008)、436-437頁。
- ^ a b c d e 森川幸一「戦争の禁止 -国家の武力行使はどこまで許されるか」『国際法キーワード 第2版』、202-203頁。
- ^ a b c d e f g h 小寺(2004)、226-227頁。
- ^ a b c d e f g h 森川幸一「戦争の禁止 -国家の武力行使はどこまで許されるか」『国際法キーワード 第2版』、202頁。
- ^ 「グロティウス」『国際法辞典』、74頁。
- ^ a b c d 「正戦論」『国際法辞典』、205-206頁。
- ^ a b 杉原(2008)、433-434頁。
- ^ a b c 「無差別戦争観」『国際法辞典』、327頁。
- ^ 孫(2007)、57-58頁。
- ^ a b c d e f 山本(2003)、704-706頁。
- ^ a b c d 杉原(2008)、434-436頁。
- ^ a b c 松田竹男「武力不行使原則と集団的自衛権」『国際法判例百選』、206頁。
- ^ 松田竹男「武力不行使原則と集団的自衛権」『国際法判例百選』、207頁。
- ^ a b c d e f g 小寺(2006)、440-442頁。
- ^ a b c d 森川幸一「戦争の禁止 -国家の武力行使はどこまで許されるか」『国際法キーワード 第2版』、204頁。
- ^ “forceの意味 - 小学館 プログレッシブ英和中辞典”. goo辞書. 2022年4月10日閲覧。
- ^ 杉原(2008)、314-318頁。
- ^ a b 藤田久一「核兵器使用の合法性事件」『判例国際法』、620-621頁、623頁。
- ^ a b c d e f 小寺(2006)、439-440頁。
- ^ 「武力行使」『国際法辞典』、298頁。
- ^ a b c 杉原(2008)、438-439頁。
- ^ 森川幸一「戦争の禁止 -国家の武力行使はどこまで許されるか」『国際法キーワード 第2版』、204-205頁。
- ^ 「自衛権」『国際法辞典』、167頁。
- ^ 「集団的自衛権」『国際法辞典』、176頁。
- ^ a b c 杉原(2008)、454-455頁。
- ^ 「旧敵国条項」『国際法辞典』、63頁。
- ^ 杉原(2008)、411-412頁。
- ^ 小寺(2004)、221-223頁。
- 1 武力不行使原則とは
- 2 武力不行使原則の概要
- 3 国連憲章上の例外
- 4 武力不行使原則の課題
- 5 脚注
Weblioに収録されているすべての辞書から武力不行使原則を検索する場合は、下記のリンクをクリックしてください。
全ての辞書から武力不行使原則 を検索
- 武力不行使原則のページへのリンク